好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

フリースのお話

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軽量ながら保湿性があり、速乾性があるミドルレイヤーの定番フリース一言でフリースと言っても様々な物があるのを知っていますか?フリース(fleece)とは、ポリエチレンテレフタラート(PET、ポリエステルの一種)で作られた柔らかい起毛仕上げの繊維素材。商標であるPolartec®が最も知られています。

レインウェアで使われている素材が色々あるようにフリースの素材も色々あるのです。レインの素材も色々なメーカーから出てますよね。皆さんご存知のGORE-TEX®が防水透湿性素材の代表格ならフリースにおいてはPolartec®今回はそのPolartec®(ポーラテック)やフリースについて書かせていただきます。

「Polartec®」は高機能素材をアウトドア、ミリタリー、工業ワークウェアの分野へ提供し続けているテクノロジーカンパニー。使う用途や環境により色々な素材を作っています。

快適性 Polartec® PowerDry Polartec® PowerStretch Polartec® PowerGrid

防風Polartec® Wind Pro Polartec® Windbloc Polartec® Power Shield Polartec® Power Shield O2

保温 Polartec® Classic Polartec® Thermal Pro Polartec® Thermal Pro High Loft

Polarfleece® 

横文字だらけでなにがなんだか分りにくいですが、用途別に色々な素材を作っているのです。

快適性は、肌着やミドルレイヤーに適している物。保温性は、フワフワのフリース。防風性は、アウターシェルやアウターにも使えるミドルといった感じです。

 

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このようにウェアにタグが付いていたり商品に表記があったりしますよね?

人は恒温動物です。登山中も体温が上がれば体温を一定に保とうとし、冬でも汗をかきます。また日本の山は標高が低い樹林帯の登りから森林限界を越えて風に曝されるエリアなど極端な環境変化があります。運動負荷と気温変化に応じて、着たり脱いだりが必要な訳ですが、なるべく幅広く体温調整ができるウェアが便利ですよね。

登山用に開発された素材、デザインされたフリースウェアは当然、その”使用環境”を考えた上で開発されていますので、動きやすさや、快適性や保温性はファッションや街着向けに作られた物と断然違います。

裁断と縫製で言えば立体裁断で腕や体の動きを妨げなかったり、違う素材を使ってストレッチ性や通気性を高めたり、ザックを背負った時に縫い目が当たらないようにしたりと動く事を考えて作られてます。

写真で例をあげてみます。

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例1:表はこんな感じで毛足の長いフリース。

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例1:↑のフリースは裏地に防風素材がラミネートされていて風を通しません。アウターにも使えるフリースです。

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例2:例1のように毛足は長いのですが…

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例2:裏は通気性が非常に高い。このモデルは汗をかきやすい脇下部分の素材が別の素材を使用してより通気性がよくなっています。単体では風を通すのですが、メインボディは毛足が長い素材。このフリースの上にアウターを着れば羽織ればあたたかです。見た目は例1と同じですが2つは全く別物です。形や裁断についてはお店でぜひ見て見てください。

私も沢山のフリースを所持していますが、登山には最近、Polartec® Power Gridのフリースを多く活用し、フード付きの物を愛用しています。この素材は通気性が非常に高く、単体で着ると風を通しますが、風を防ぐシェルを着てしまえば非常に暖かい。ストップ&ゴーが多い登山でのレイヤリングに適しているフリースです。格子状の凹凸のおかげで汗を吸ったり乾かしたりの効率が高く、「私は汗かき」とか基礎代謝が高い方なんかにもおすすめです。

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フードは目出し帽のようになりますので、肌寒い日や夏山でも標高の高い場所、ネックウォーマーいるかな?なんていう季節の変わり目などにも重宝します。

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登山をしない方はフリースと言えば冬の物ですが、登山者は通年使う道具です。自身のお客様にも「このフリースあたたかそうと思って買ったのに寒いとか、暑すぎる」とか色々な事をよく言われたのがこの寄稿をさせていただいたキッカケでした。素材だけでも多様なバリエーションがありますから、店頭でスタッフにお声がけいただき、ご自身の用途にあったフリースを選んでいただければと思います。

遭難対策

昨日は好日山荘グランフロントにて、
「遭難事例から学ぶ判断力」という内容で
講義をさせていただきました。

お伝えした事は、自然の動きや人の動きに
「気がついてください」
めちゃくちゃ見て感じて判断するための
材料を集めてください。というものです。

所属する日本山岳レスキュー協会
http://nmra.comyu.org/
にて過去に捜索した事例や、
参加された方々のヒヤリハット話、
私の体験談などのほとんどは、
山岳環境の危険因子以上に、人の心理や動作が事故の
きっかけであると改めて感じるものでした。

先週の六甲の危険な熟達者ルートで、親子四人に会って驚いたものです。判断力のない小さいなこどもは
浮き石や濡れ岩を介さず歩き、親御さんもその危険をあまり認識されておらず、私達がロープを張り安全に下山してもらいました。←ちなみに田中敦ガイドがその親子にルートを尋ねられ、命にかかわるからやめた方がよいと注意されていたそうでしたが、、、

過保護ぎみな日本社会で失ったものは
危険察知能力!状況判断力!生命力!
あーなんだかもったいない
一般社会ではそれらがなくても、死にはしないかもしれないが、山ではすぐ死に直面してしまいます。

山をちゃんとやってる人たちは、
自立して判断できる能力が高い!生命力あり!
もっとも分かりやすいのはテント登山ですね
うーん来年はテント登山教室をしよーかなー

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島田ガイド塾 テント登山実技
日帰りでテント登山をミニマムに体験
食材買出→パッキング→登山→テント設営→下山→片付けと一連の流れを一日でやってます

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10月国立登山研修所 山岳遭難救助研修
参加される研修生は肉食系消防警察自衛隊

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11月日本山岳ガイド協会 ファーストエイド研修
HuMA(災害人道医療支援会)の救急医や救命士から
学ぶのでほんとに、役立つ学びになります。

島田ガイド事務所
http://www7a.biglobe.ne.jp/~naturalstyle/

ストーブ

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2015年冬からSOTOのストーブを使用しています。

主に使用した2機種と、そのシチュエーション例を記載しますのでこれからストーブを買う方のご参考になればと思います。

風に強く寒さに強いストーブ

マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター

※上の写真、ゴトクはオプションを使用。

●使用シチュエーション:主に夏期 ※冬期は積極的に使う場面ではなく危急時用に。

●発熱量:2800kcal/h

軽量な上に使える。2016年の夏山では常にバックパックの中のストーブはこれでした。本体は69g。それに軽量化重視、危急時のみを想定した場合は付属のゴトク7gを。調理を想定した場合にはこの別売りオプションのフォーフレックス27gを使用。火力も夏山には十分な程です。山小屋泊でお湯を沸かしたり、お客さんとちょっとコーヒーなんて時に使いました。オプションのゴトクは折りたたみ式でかっこよく、こんな事良く考えたな〜と思うまさにメイドインJAPANという感じの作りです。本体の見た目もすっきりで2013年のグッドデザイン賞を受賞しているのも納得。

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そして世界が認めた新次元のガソリンストーブ

MUKAストーブ

●使用シチュエーション:冬期、または重量を気にしないキャンプ時など。

●発熱量:4000kcal/h 

ガス式の場合、寒冷下では徐々に出力が低下してしまいます。寒いなかで料理をと思っても、「火が点かない!」なんてことも。その点ガソリン式はジェネレーターを加熱して気化させる仕組みなので、寒冷地でも使用可能。寒さに強いことは、ガソリン式の大きなメリット。そして火力が強い。ガソリンストーブの魅力は火力!火力が強いことで、水が沸騰する時間も短くすぐ調理ができます。特に冬期は雪を溶かし水を作り沸騰させますから、寒い雪上では強い味方。さらに予備ガソリンを持っていけば燃料を気にせずにガンガン使えるのもガソリンのよい所。ですので冬期にストーブを使うというシチュエーションでは火力の強いガソリンストーブを主に使用しています。

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そしてご存知の方も多いと思いますが、こちらのMUKAストーブの売りはなんとプレヒートなし!プレヒートといえば予熱作業や使用後のメンテナンス、道具に対する愛着をいっそう深めるいわば「儀式」の一つで私もそれが好きで使用していました。

しかし、このプレヒート作業はストーブをずっと使うというシチュエーションではよいのですが、ガスストーブのように火を止めたり付けたりと使いたい場合には不向き。このMUKAストーブはプレヒートいらずで付けたり消したりが非常に簡単に行なえるのです!ガソリンストーブのよい点である火力の強さと、ガスストーブの扱いやすさを併せ持つガソリンストーブ。以前は他社の信頼のガソリンストーブを愛用していましたが、このプレヒートなしの便利さ故に最近のメインはMUKAストーブです。

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以上、個人的なレビューでございました。

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オマケ。このポケトーチも大活躍!


 

秋の遭難事故を減らすために!!

私の住む長野県白馬村でもメインの観光地の一つとして有名な八方池。

ここにアプローチする八方アルペンライン(八方尾根スキー場)の春夏秋の営業が本日で終了となります。今日も紅葉を楽しむ最後のチャンスという事で多くのお客様が八方池に向かっていることでしょう。

 

写真は本日の八方池(白馬村観光局より)

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標高の高い北アルプスの紅葉は終わりに近づき、これからは2000m級の山、そして里山と紅葉の分布が移り変わっていきますね。空気が澄んだこの季節は真っ青な秋晴れの下、遠くの山、景色まで見渡すことができる。そして真夏のように歩いていても汗が出て不快になることも少ないのでとても気持ちの良い登山が楽しめる季節ですね。

 

そんな素敵な季節の登山に水を差すようなことを言ってしまいますが、この時期(GWや、秋の連休 季節の変わり目)は数年に一度大きな遭難事故がおこっています。

「遭難」というと発生事例割合上位にくる道迷い、滑落、転倒を想像しますがこの時期に怖いのは寒さや雪・雨がもたらす遭難です。発生事例上位の理由により遭難してしまい、その結果ビバークを強いられてしまっての疲労凍死、悪天候による凍死というのが死因になってしまう事故がおこることがあります(しかも複数の人数が一日で)。

 

遭難を防ぐ方法は多くありますが一番簡単にできるのは””保温着を装備に加える””ことです。何かあった時に暖かい服を持っていることで助かるかもしれないという事は勿論ですが、寒いと感じた時点でしっかりと身体を温めてあげることで遭難を未然に防ぐことができるはずです。ツェルト、バーナー、エマージェンシーシート等の危急時装備に合わせて軽量コンパクトなので大きな負担にもならないインナーダウン、フリース等を装備に加えて下さい。

 

また、アンダーウエアも重要です。加藤ガイドがコラムに書いているので合わせてご覧ください。こちら

 

11月4日から始まる好日山荘決算セールページにて各店舗でのお勧め商品を紹介しています。お気に入りのウエアを持って気持ちの良い秋山登山をお楽しみください!!

SONYアクションカムを持って 紅葉の北アルプスに

10月16日(日)に銀座にあるソニーショールームにて「アクションカムを使った登山の楽しみ方」というトークイベントを開催・担当しました。

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アクションカムとは、バックパックやヘルメット等に設置して行動しながらでも動画を撮影できる小型軽量のビデオカメラです。歩いたり、岩登りをした際でも空間光学ブレ補正を採用することによりほとんどブレません。また防滴になっているので雨でも問題ありません。

 

今回このイベントの為に実際に山登りをして動画を撮影してきました。

実際の動画はまだアップできる状態にありませんが、前回のトークショーの際に撮影した動画はソニーさんのFaceBookにアップされていますので是非ご覧ください。

動画はこちら(10月13日の記事です)

 

最新の動画は次回のブログでアップしますが今回はその際に撮影した写真を

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唐松山に登る登山道からのご来光と大雲海

 

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同じく唐松から望む南アルプスと富士山

 

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涸沢周辺は紅葉が始まっていました(10月4日)。

現在は見頃です。山下ガイドの紅葉情報

 

私の住む白馬村も今週末、来週末は紅葉が見ごろです。是非白馬へ!!

 

紅葉を楽しまれるにはしっかりとした防寒着が必要です。山では既にダウンジャケットを着る方もいらっしゃいます。好日山荘ではただいま秋山セール開催中です。

各店舗では30%~なんと50%OFF商品が多く並んでいます。もちろん秋冬に使える防寒着もたくさん!! 特価商品、アウトレット商品でもさらに10%ポイント還元対象になりますので本当にお買い得です!!秋山セールページ

 

しっかりと準備して気持ちの良い秋山をお楽しみください!!

私の登山靴

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最近、秋にしては暖かい日が続きましたが北アルプスの山小屋営業も徐々に終了し、標高の高い山では冬へと季節が移り変わっていきます。2016年無積雪期のアルプス登山シーズン、シチュエーション別に使った登山靴を紹介したいと思います。ガイド時だけでなくプライベートでも履く登山靴、全てを支える重要な装備ですからこだわりは人一倍。皆さんはどのような登山靴を使ってますか??

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今秋に新調したのがこれ!主に北アルプスの岩稜帯での登山に使用。

良い点:軽い(このクラスの靴なのにまるでトレッキングブーツのよう)、しっかりしているにも関わらず足首が動かしやすい。岩場で細かいスタンスにも乗れ、かつ安定感のあるソールパターン。包み込まれるような一体感、軽量レースフックで紐が締めやすいなど非常に良いブーツ。来年も主力のマウンテンブーツになりそうです。

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昨年から使用しているこのマウンテンブーツは前者と比べるとよりしっかりしています。ですので、主に長期縦走や重量の多い時や岩稜帯歩行に使用。また、2000m級の山までの残雪期にも使用いたしました。

加藤ガイドも使用、下記リンクに詳しいレビューも書かれてますよ。

秋山に向けて新調しました登山靴! - 好日山荘 ガイドコラム


guide-column.hatenablog.com

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左のトレッキングブーツは、里山やテクニカルでないシチュエーションの登山に。トランゴSエボはそろそろソールが摩耗して長期休暇予定 。右はアプローチシューズやデイハイクに使用しているボルダーX。

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ハイキングブーツ、トレッキングブーツ、マウンテンブーツとブーツにもカテゴリーがあります。製品のカテゴリーと特徴を理解して使用しましょう。

※登山後のメンテナンス中の写真です。洗ってメンテナンス剤を使用しました。

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実は最近、私の登山靴は全てスポルティバ。数年前は色々なメーカーの物を履いていたのですが同社の靴が足に合っているようなのです。ちなみに冬の靴もそうでございます…。

足の形は人それぞれ。

「日本人の足=幅広」聞くところによると、日本人は自分の足囲が広いと思いこんでいる人が多いようです。測ったこともないのに「足幅が広くて…」と思い込んでいる人が実に多い気がします。

自分は外反母趾で見た目の横幅が広いですが、以外にもスリムな形の靴が合ったりします。

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お店にはハイキングブーツからトレッキングブーツ、マウンテンブーツと沢山の種類が置いてあります。用途に合わせ、店頭でスタッフと色々なモデルを試しながら自分にあった登山靴を見つけていただければと思います。