美味しい食事は山の楽しみのひとつですが、標高が高くなると100度で沸騰する水が低い温度で沸騰してしまうため、いつもより硬く仕上がってしまうことがあります。まあ、食べられないほどではないけれどもちょっと残念ですね。
平地では1013hPa(1気圧)で水の沸点は100℃です。標高が1000m高くなるにつれて気圧は約100hPaずつ低下し富士山の山頂 (3776m)気温5度の時では約650hPaで水の沸点も約88℃まで低くなります。標高が上げると空気の重さが減っていき、気圧が下がります。お菓子の袋がパンパンに膨れ上がったり、頂上で飲み終え蓋をしたペットボトルが家に帰ると凹んでいることからわかりますね。パンパンに膨れた食材袋が破裂すると周りにまき散らすことになるので気をつけた方が良いですね。私自身の体験はありませんが可能性はあります。
標高が上がって気圧が下がると水面にかかる圧力が減るので、水が蒸発し易くなります。つまり、100度より低い温度で沸騰してしまうのですね。ある場所での標高と気温によって気圧と水の沸騰温度は下記のとおりです。
私もヒマラヤ登山では5000mを超える標高で過ごすので、圧力鍋が欠かせませんでした。十分に圧力を抜いてから蓋を開けないと悲惨なことになります。私はテント内にラーメンをまき散らしました。火傷の可能性が高いので注意しましょう。ご家庭でも圧力鍋を上手に使うと美味しく早く調理ができますね。
標高 | 気温 | 大気圧 | 地上に比べて | 水の沸点 |
0m | 20度 | 1013hPa | 1倍 | 100度 |
1000m | 20度 | 903hPa | 0.89倍 | 96.8度 |
2000m | 20度 | 807hPa | 0.80倍 | 93.8度 |
3000m | 10度 | 714hPa | 0.70倍 | 90.5度 |
3776m | 5度 | 650hPa | 0.64倍 | 88.0度 |
5000m | 0度 | 561hPa | 0.55倍 | 84.3度 |
8000m | -30度 | 366hPa | 0.36倍 | 73.8度 |
8848m | -30度 | 332hPa | 0.32倍 | 71.5度 |
私たち登山者が山で美味しいご飯を食べるには100度に近い温度で調理した方が良いのですが、3000mの稜線では90度程度にしかなりません。アルファ米のように水でも食べられる食材であっても、メーカーが推奨する調理時間より通常より時間をかけた方が良いかと思います。
拡大表示 アルファ米と余りもの食材の炊き込みご飯
拡大表示 インスタントラーメンも煮え具合は?
山で良く使うフリーズドライ食品はどのようにつくられているのか。これにも圧力と沸騰が関係しています。
水の沸騰する温度 | 真空度 | 大気圧 |
100度 | 760 Torr | 1013hPa |
51.3度 | 100 Torr | 133hPa |
37.8度 | 50 Torr | 66.6hPa |
22.2度 | 20 Torr | 23.7hPa |
17.5度 | 15 Torr | 20.0hPa |
11.4度 | 10 Torr | 13.3hPa |
7.9度 | 8 Torr | 10.7hPa |
-1.7度 | 4 TOrr | 5.3hPa |
-9.7度 | 2 Torr | 2.7hPa |
食品を入れた真空容器(真空チャンバー)を真空ポンプで真空排気すると食品に含まれる水は容易にガス化し変化してしまうので、カップラーメンや食品スープの粉などはこの現象を利用しています。
登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。