登山でよく聞く「シャリバテ」。ハンガーノックとも呼ばれ、長時間の行動により、エネルギーが不足し低血糖状態になる事です。一度は経験した事がある方もいると思います。そして、脳の働きも低下し思考力が鈍くなります。全身の酸素消費量の20%を占める脳を守るため酸素が体に回らなくなり、歩くだけで呼吸が荒くなり、運動停止状態になります。エネルギーの主な源は、糖質(炭水化物)や脂質です。これらエネルギーを計画的に補給することで長時間の運動が可能になります。
先日の講座で新たな試みとして、参加者の皆さんに摂取カロリーを表にして記録していただきました。各休憩ポイント毎に摂取カロリー、飲量、休憩時間、行動時間などを記録しながら歩きました。「長い距離をバテずに歩く」という実証的な講座です。各ポイントまでの行動時間は距離にして2㎞前後。エネルギー補給は、小休憩毎(10分位)に200kcalと、大休憩毎(20分位)に500kcalを目安にしました。行動時間は9時間30分程(休憩120分程)で、参加者の皆さまは平均して約2000kcalを補給していました。結果、バテるという事はありませんでした。
登山で消費するカロリーの基本計算式は体重(kg)×行動時間(h)×5kcalです。
この60~80%ほどの補給が目安です。私は朝食含めて2175kcalを採りました。推定消費カロリー2625kcalの約80%です。空腹感なく歩く事ができました。
長時間の登山で体力を不安視する方がいますが、体力が足らなくてリタイアする方は多くありません。多いのは体調不良でリタイアする方です。大切なのは体の調子です。登山中の水分・エネルギー補給をしっかり管理して体調を整えながら歩く事です。
エネルギーは車で言うガソリンと同じで、枯渇すれば動けなくなります。補給するカロリーは、これから行動する時間を予測して採ります。食べた分だけ動くという考え方です。一方水分は、消費した分を補給するので、喉が乾いたら飲みます。そして、重要なのは「空腹のまま下山しない」事です。空腹のまま下山すると、必要以上に食べてしまいます。下山後、帰って風呂入って寝るだけなので、それ以上のエネルギー補給は必要ありません。食べ過ぎると、脂肪となり体に蓄積されてしまいます。下山時までの必要なエネルギーを登山中に補給して、下山後の食事は適量で済ませましょう。
そして、疲れた身体に大切なのは栄養と睡眠です。疲労は免疫力の低下に繋がります。成長ホルモンの分泌を最大限にするために、登山の後は栄養のある食事&アルコールと睡眠で疲労回復に努めましょう。ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした。