親不知から北アルプスの山々へ。
取材をかねた大縦走を完登するために、ガイドとして最も気を使うところは、体調管理と天候の読みだ。ペース配分を乱せばあとからそのつけがやってきて終盤に衰え、完登は厳しくなる。天候の変化や飲料や行動食不足で熱中症や低体温症になれば縦走を続けることはできない。同行者の技術体力にあわせながら天候の機嫌を見定めてひとつひとつ山を登ることとなった。
◯1日目(9/3)
親不知0mー尻高山ー白鳥山ー栂海山荘1540m
登り 2318m 下り 778m 距離 15km
有無を言わさない急登はある意味、覚悟をさせてくれる旅のはじまりだ。焦らずしかし無駄なく雨天の辛抱の登り。ここでは決して大股歩きはしてほしくないものだ。アルプスの縦走路のはじまりの景色を楽しみに丁寧にコツコツ歩くしかない。泥道も所々ありスパッツが役に立つ。暑くてもケガ防止で長袖で歩きたいところですね。栂海山荘は事前申請し宿泊。直前に雨が降っていれば雨水を利用して煮沸や浄水器で飲料にできる。雨のない時なら蓮華の水場で確保する必要あり。
◯2日目(9/4)
栂海山荘1540mーサワガニ山ー朝日岳ー朝日小屋2150m
登り 1430m 下り 820m 距離 14km
サワガニ山までの小さなギャップをいくつも越えるとアルプスらしさが少しでてくる。池塘混じりの景色を眺めながらたおやかに高度を稼ぎ朝日岳へ向かう。この辺り雪渓で取り残された7月の高山植物が姿を表すのも楽しみのひとつだ。ニッコウキスゲ、ハクサンフウロ、ウサギギク、可憐に咲く花と雪渓、今回は雷鳥もたくさん現れ疲れを癒してくれた。北アルプスでありながらどこか北海道や東北の縦走路を感じさせる雄大な尾根を登っていく。朝日岳からはよく手入れのされた登山道を富山側へ下り、人気の小屋 朝日小屋に到着する。朝日小屋オーナー清水ゆかりさんの登山者目線の心配りが小屋の随所に表現され、たいへん快適で心地よい時間を過ごすことができた。
◯3日目(9/4)
朝日小屋2150mー雪倉岳ー白馬岳ー白馬山荘2832m
登り 1421m 下り 739m 距離 12km
険しさの目立つ北アルプス南部と違い、静かで山に包まれるように登山を楽しめるのがこのコースだ。雪倉岳までの豊かで雄大な自然、雪倉岳からは森林限界を越えた白馬岳は雰囲気を一掃し、いよいよ北アルプス北部、後立山連峰に入る。代表格白馬岳へ登頂し、 山荘はもう目の前だ。今までに比べ一気に登山者も賑やかになってきた。白馬山荘は800人収容ができる巨大な山荘。ほんとによくここに建てられたなと感心するしかない。
つづく