トレッキングポール、ストックと呼ぶ人も多い歩行中のバランス補助だけでなく、積極的にスピード登山で使う姿もよく見るようになりました。
ところで皆さんは先端にゴムキャップは装着させているでしょうか? 大多数の方が歩かれるような登山道や木道などでは、ゴムキャップをつけてもらうようお願いしています。
なぜ、わざわざ使うのでしょうか。
ポール先端にはタングステンカーバイトなどの丈夫な金属チップが付いています。これのおかげで硬い雪面でも刺さり、滑りやすい岩に負けずに喰い込み安定するのです。
今年の海の日連休に南アルプス北岳・間ノ岳に行ってきたのですが、美しいお花畑の登山道に、所々には無残な穴がたくさんあけられていました。
ここ南アルプスの地質は数億年の大昔、太平洋の真ん中、海底で噴き出た溶岩と温かい海で育ったサンゴ由来の石灰岩、深海に積もってできたチャートなどバラエティに富む岩石が3000m級の稜線まで隆起したものです。
10万年前からの氷河期が終わり、現在まで続く一万年前から始まった穏やかな気候が豊かでバラエティ溢れる植生を育んできました。
堅い岩石も今なお続く激しい隆起活動、風雨や寒暖の差、氷結膨張による崩壊、様々な風化作用によって砕かれ、ささやかな隙間や凹地に柔らかな土砂が積もります。そういった極めて厳しい環境に生きるのが高山植物なのです。
この美しい景観に刻まれた登山道はもっと、もっと丁寧に利用したいものです。
私たち登山者自身が登山靴で歩くこと自体、自然にダメージを与えているのは間違いありません。が、子孫まで伝えたい素晴らしい自然に触れ、そして愛するにはどうしても自然そのものの中に入っていくことが大事だと強く思います。
貴方ならゴムキャップを付けた上で、ポールをどのように突くのが良いと思われますか。
梅雨明けが待ち遠しい令和元年の夏山、素敵な山を楽しんでくださいね。
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