前回「テントの選び方」をご紹介しましたが、今回は似たもの企画として「ツェルト」をご紹介します。
ツェルトとはドイツ語で「ZELTSACK(ツェルトザック)」日本では訳してツェルトと呼ばれています。英語圏では「シェルター」です。いずれも登山用の軽量テントのことを指しますが、ドイツ語圏ではテントもツェルトも同じ扱いで認識されています(少なくとも私が住んでいた10年前まではそうでした)。
そして実は、発祥の地ヨーロッパではツェルトを携帯している人は昔はほとんどいませんでした。今でも携帯している人の割合は日本に比べると断然低いはずです。これは、
①「ライト&ファースト」軽量=スピード=早期下山&身体負担低=安全という考え
方から不必要な荷物を減らそうという点。
②天気の急変が(日本ほどは)少なく、また、急変事前予測が割合簡単な点。
③山の奥に入っても山小屋、観光(登山)用の乗り物が充実 = 逃げ込める点。
④悪天候時に行動しない(休暇が多いので、予備日がたくさんある人が多い)点。
等が考えられます。
ヨーロッパ登山かぶれの私も日本帰国後すぐは、ツェルトは持たない派でした。今考えると日本とヨーロッパでは環境が全く違うから日本では必要であると気がつくのに時間がかかった自分が恥ずかしいです。
ヨーロッパの②~③が日本ではあてはまらない。そして、①に関しては、「ツェルトは重くない」 最近の1~2人用ツェルトは重量がなんと150gを切るものも出ています。これだけ軽ければ負担にはほとんどなりません。負担にならず、いざという時にあるとないとでは生死を分ける位の効果を発揮するのであれば持って当然と考えられます。
卓上の計算になりますが、どれくらいの効果があるか。
標高3000mの山に真夏に出かけるとします。気温は100m標高を上げると湿度等にもよりますが約0.6℃下がります。下界(海抜0m)で30℃だった場合、山頂付近では12℃になる計算です。そして、風速が1mで体感温度は1℃下がると言われていますので、風速が10mあった場合、体感温度は2℃となってしまうのです。さらに、雨や雲(ガス)にまかれると空気よりも熱伝導率がはるかに高い水がウエアや体につくことになるため、外気に冷やされるスピードが早くなり体温は急激に下がってしまいます。
ツェルトを使用すると、風、雨が凌げるため、単純に考えると12℃の空間を作り上げることができるのです。
如何ですか?長々と書いてしまいましたが、ツェルトの必要性を分かって頂ければ幸いです。では、選び方です。「大きいものだと重くなるし」「小さいのだと狭そう」とお悩みになると思います。以下のをご参考にお選び頂ければ良いと思います。
- 人数
- 山行形態
- テントの有無
- ご自身の体力
基本的には個人装備として各自が1つ携帯するのが理想ですが、「体力」「山行形態」を考えてご夫婦やお仲間でシェアすることを前提で携帯するのも良いでしょう。
例①: 単独行、日帰りメイン / ガイド登山に参加 = 軽量の1人用ツェルト
例②: ご夫婦や友人と2人で登山、難易度の低い山、山小屋泊メイン = 1~2
人用ツェルト(2人が横になれる)
例③: ご夫婦や友人と2人で登山、難易度の高い山、山小屋泊メイン = 1~2
人用ツェルトを体力のある方が、相方が軽量1人用ツェルト(計2個)
例④: グループ登山、縦走、テント泊 = テント(フライ)を背負う人以外が
1人用を携帯
実際には無数のパターンがあると思いますので、お選びの際に悩まれたら店舗スタッフに遠慮なくご質問下さい。
最後に、「ツェルトを持っているから大丈夫」ではなく、ツェルトを使わなくても問題なく、無理なく下山できることが第一です。安全第一で楽しい登山をお楽しみくださいね。