好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

新年と墨

新年といえば書初め、書初めといえば墨が必要ですが、墨の色に関して書かれた随筆が「冬の華」という書物にありました。岩波書店から昭和15年11月10日に出版された書籍で、著者は中谷宇吉郎氏です。
中谷宇吉郎氏は物理学者で、昭和12年10月の美術思潮 に書いた「墨色」という随筆がこの「冬の華」に載っています。戦前の本で仮名遣いや漢字に少々読みにくいところはあるのですが、わかりやすい文章です。
ここでは、墨色には青味を帯びたもの、茶色がかったもなど色々と書かれています。話にはこの微妙な色の差を科学的に解明しようと取り組むN氏を登場させて解説しています。名墨といわれるものの蒐集家の世界の事、科学的とはどういう態度の事なのか?すべての名墨が手に入って分析したからと言ってすべてが解明できるのか、など人間味あふれる科学者目線の随筆です。

私はなぜか、和紙、硯、墨、落款などが好きなのです。自分は小学校の時にお稽古させられた習字を数日で逃げ出し、現在も下手な字に自信があるのに全く不思議です。自然の素材からできたもので、手作りであって、職人技がものを言うからでしょうか。
ところで、墨は煤、つまり炭素を膠で捏ねて固めたものであるのに、土に埋もれた千年も二千年も前に書かれた筆書きが現代に蘇るのがとても不思議なのです。現代の石油化学物質が100年も持つでしょうか。

日本の墨はその生産の90%が奈良県であることはご存知でしょうか。墨の歴史はこちら。

2011年新年の第一回目は山とは関係ない話題となってしまいました。冬山には雪が付きもの、雪といえば結晶、そして中谷宇吉郎氏なわけです。この中谷氏は様々な自然現象を観察し、再現させ、科学的に解明しようとしました。この姿勢を忘れてはいけないと思います。

私たち登山者も、不確実なことがある自然界に入っていくわけですから、危ない危ないと言ってリスクを避けてばかりの山登りをしていては、力を高めることができません。だからといって、むやみに突っ込めということではありません。

未知なる対象が存在するという謙虚な心を持って、出来るだけ科学的に解釈し、後は思い切って一生懸命やるということです。
やるだけやってダメなときは、一旦潔く引いて再挑戦していくことのです。

今年は何でも良いので「課題と目標」を定めて、プレッシャーを感じながらやっていきたいと思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ、鉱物、水滴、自然、花、地質、鉱物などを載せています。