好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

登山の技術考

この記事は昭和35年7月号岳人に「合宿はどうあるべきか」山野純久氏が述べた文章ですが、この中に今に通じる、いや今は既に失っている点が書かれていたのでその一部をご紹介したいと思います。

岳人196007号.bmp

筆者は剣岳東面の明るく開放的な八つ峰や源次郎尾根に登山者が偏っている事を指摘しています。「・・・合宿の主眼は、いかにして正しい登山の実力を身につけるかということにあるのであって、合宿の対象を選ぶ際にも、まずこの点を考えねばならぬのではなかろうか。・・・」

なぜ、そのようなことを言っているのか、「・・・登山者がやたらと多く、極端なはなしが、その辺でゆき倒れてもすぐにあとからきたパーティーがかついでいってくれるかも知れず、・・・(中略)・・登る順番を待つほどの岩場などではルート・ファインディングも読図もあったもんのではない。・・」

更には「・・難しい岩壁を、岩登りの特殊な技術をつくして登るよりも、(池の谷)右俣を下降して左俣を登り、早月尾根をたどって帰るコースの方が、東大谷の概念をつかむという点でははるかにすぐれているであろうし、それが正しい順序ではないだろうか。・・」

何も剣に行かなくてはいけないということではありません。その山でなければ得られない何かを求めて、力の出し惜しみをしない登山をするからこそ、その人は伸びるのだと思います。昨年の夏に国立登山研修所研修会で大学生と接しましたが、終わる頃になると彼らは心底、力を出し切り、手を差し伸べ合い、顔を見合わせれば、疲れた中でも笑いあう姿がありました。ここで感じたのは人が劣化したのではなく、人を育てる場が劣化したのではないか、若い彼らは被害者かもしれないということでした。

山岳自体はこれが書かれた50年前も今も変わらずあります。山の危険という点では岩場の崩壊(北岳バットレス崩壊2010)、積雪の減少など今までとは異質の危険に対処しなければいけないくなりました。先輩から後輩への伝承も滞り危険に対する感受性も低下しています。

登山技術を細分化して覚えていくことは限られた時間の中では必要なことです。でも年に一回は総合的な登山技術を会得する為に山を大きく捉えて登ってみてはいかがでしょうか。特に20代から30代の方には明日からでも実践してほしいと思います。
 

大学山岳部や社会人山岳会の衰退し、個人もバラバラで登るかツアーに参加するのが多くなってきています。登山スタイル・日程も小粒、クライミングも分化している今日だからでしょうか。山野氏が書かれたことが気になって仕方がないのです。

登山用品を販売する(株)好日山荘では、登山学校を通じて安全登山の普及をしています。来年2011年も引き続きチェックをお願いいたします。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ鉱物水滴、自然、花、地質、鉱物などを載せています。