好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

わかん

雪山といえば、日本の山では長く「わかん」が使われています。登山者の間では「ワッパ」とも呼ぶ方もいますが、「輪かんじき」が元の呼び名だと思います。冬山に必要な装備の一つである「かんじき」について調べてみました。

「かんじき」と改めて、口に出してみると変わった響きですが、どのような漢字を書き、起源はどのくらい昔になるのでしょうか。

漢字は「」と書き、「そり」とも読みます。もう少し詳しく、大辞泉でみると「」という漢字が出てきました。輪かんじきの材質は地方によっていろいろ違いますが、立山では「マンサクやクロモジ」、飛騨地方では「くろもじ」、新潟・長野では「とねりこ」の木など、その地方で手に入る粘り強い木を温め、まげて作りますので、「木偏」がつくのには納得です。しかし、これに「毛」が三つ、或いは「田」に「糸」とはどういうことなのでしょうか。どなたか、教えてください。

道具としての「かんじき」の歴史はとても古く、新石器時代(約8000年前位で、日本では縄文時代も含まれるといわれています。)に北欧から北アジア・北アメリカに伝わり、日本でも縄文時代の遺跡から出土しています。以前のブログ「地球の大きな営み」で書きましたが、地球は今から5000年から7000年前が最も温暖な時期にあたっていました。それ以前の寒冷期に大陸と陸続きや今の日本海がとても狭い時期に伝わったのでしょうか。
水田稲作が行われるようになった時の「田下駄」に近い使われ方をした「かんじき」があったそうです。雪の上を歩くためだけに作られた道具と思いこんでいましたが、足がもぐって歩きにくいのを解消する道具としては同じようなものですから納得できる部分もあります。
山陰地方から北海道までの積雪地域で「かんじき」は独自の形になって使われ続けました。北海道産のものはスリッパのような形をしていて、広い平原の雪の上を歩くには適した作りです。福井県や石川県の白山周辺の麓では洋梨の形で前後が反りあがっています。雪の多い急峻な山の中でも動きやすく、特に傾斜での下りで進みやすいのが特徴です。岐阜県白川村は丸い形をしていて「爪」がついているのが特徴です。富山県立山町芦峅寺には、冬山斜面や深雪、硬い雪等、如何なるところでも容易に安心して雪上歩行できるように、「爪」を組み込み、横滑りを止める独特の形になり、1200年前から雪上歩行、熊狩り、林業者、炭焼き、材木切り出し等に愛用されてきました。
富山県の芦峅寺などで使っていたものが登山者に普及しています。最近では堅雪用に大きな爪が両サイドについた軽金属製のものも普及しています。
本来は縄で靴の上から縛り付けて使うが、金属製の製品にはナイロンなどのテープと固定用の金具が使われています。
下図は麻縄で縛る代表的なものです。現在のスノーシューとは違い、極端に固定せずに、土踏まずで前後に回転するような感じです。この結び方のメリットはすぐに「かんじき」を外したいときに紐を緩めるだけで、つま先側の甲から紐の輪が外せることでしょうか。雪崩に遭遇したときに有利に働くかもしれません。

立山わかん20101219.jpg  立山かんじきはき方20101219.png

しかし、今まで30年の登山で私は上図のような結び方はしていませんでした。重たい冬山装備を背負った状態で、「かんじき」が外れることは大変つらいことなので、外れないのを重点にしていたのです。大正解というのがあるのかどうかはわかりません。今一度、今年の冬、確認してみたいと思います。

日本の「かんじき」は全長が短く、つま先やかかとを雪面へ食い込ますことができるので、、急斜面の登下降に有利になります。私の経験では、ハイマツが下から覗くような積雪が落ち着かない初冬や手を使わないと登れないような急斜面、クランポン(アイゼン)ピッケルが必要な硬い斜面や岩が混じるような場面ではこの日本の「かんじき」が有利だと思います。

このような場面では「かんじき・クランポン」だと思います。(八つ峰一峰四稜)

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一方、今最も人気があるスノーシューは、雪山を広く楽しむのにはふさわしいアイテムです。
「輪かんじき」が最も得意とする場面以外であれば、広く使えるのです。今の登山で言えば、栂池周辺、北八ヶ岳、雪の上高地、東北や北海道などのなだらかであるところは守備範囲だと思います。つまり、これからそのような雪山に行くとか雪原でハイキングをするのであれば、スノーシューをお勧めします。

雪の樹林帯.jpg


スキーやスノーボード滑降のために登る性能を向上させたモデルもあります。

スノーシューに関しては今回深くは触れませんが、一番の違いは新雪での浮力です。底面積が大きく、「かんじき」とは違って、底面全体がパネルで覆われています。雪上を歩くときの効果は圧倒的にスノーシューが有利です。
ぜひ、登山用品店でその違いを確認してみてください。

来年1月15、16日には鳥取県にある伯耆大山で、雪上歩行講習会を行います。スノーシューや輪かんじきも体験できます。詳しくはこちら

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ鉱物水滴、自然、花、地質、鉱物などを載せています。