好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

金剛山と水銀

来年、1月20日に好日山荘登山学校の山行金剛山に行きます。千早赤阪村から登るコースです。コースを調べていたところ、どうも「水銀」という言葉が出てきたので、調べてみました。

水銀化合物は私の好きな鉱物の一つです。その中に硫化水銀(II)(HgS)を成分とした「辰砂(cinnabar)」があります。結晶は写真のように様々で、水晶やドロマイト(炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複塩)と一緒に産出します。また、スペインのアルマデーン鉱山は2000年の歴史があり、液体状の水銀を産出します。

1:中国
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2:中国
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3:中国
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4;中国 

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5:スペイン アルマデーン鉱山

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水銀は常温で液体である唯一の金属です。様々な科学実験や装置、医薬品として使われてきましたが、今ではその毒性の方が問題となっているので、日常生活の場では見ることもなくなってきています。有機水銀中毒である水俣病は日本の公害問題の原点とも言われています。
現在、水銀中毒が減っているかといえば、水銀を使った金(GOLD・Ag)の回収が安易なため、中国などのリサイクル現場での環境健康被害は増えているようです。

中国の辰州(現在の湖南省近辺)で多く産出したことから、「辰砂」と呼ばれるようになったのですが、古墳の内壁や石棺の彩色や壁画に使用されるなど、邪馬台国の時代から知られた重要な物質です。漢方薬漆器に施す朱漆や赤色の墨である朱墨の原料としても用いられました。古くは吉野川上流や伊勢国丹生(現在の三重県多気町)などが特産地として知られています。

伊勢水銀を元に作られた伊勢白粉はこの朱砂を砕いて、それに粘土や塩のにがりを混ぜて鉄壺に入れ、加熱して水銀蒸気を昇華させ、上ふにた付着したものだったようです。成分は塩化第一水銀です。製造現場で水銀蒸気が漂う様を考えるとゾッとします。「白粉(おしろい)」を使う機会の多かった女性が不健康に色白だったのは「水銀中毒」だったのかもしれませんね。

また、水銀は金を溶かしこむ性格があるため、仏像などに金メッキをするのにも活用されてきたのです。奈良の大仏の金メッキに使われた水銀の量は2.5トンとも言われています。金は400㎏らしいです。金のリサイクルや金メッキは同じ原理です。

全国にある「丹生」という地名や神社は水銀と関わりがあると思われます。歴史好きにはたまらないと思いますので、調べてみてください。

金剛山登山口の千早赤阪村楠木正成が有名です。この地は「水銀の産地」であり、水銀は楠木正成資金源だったと言われています。赤阪の地名は土の色が赤いことから来ているそうです。
今度、登山に行かれる方はそんなことも考えて歩いても面白いと思います。

日本の水銀産地の多くは中央構造線に沿って存在しているという研究者がいます。その中でもっとも有名なのが、伊勢国丹生(現在の三重県多気町)だったと言われています。

さて、中央構造線に関しては「中央構造線博物館」に詳しいのですが、大雑把に言うと以下のようです。もちろん、フォッサマグナやこの中央構造線だけでなく日本列島には数々の活断層が走っています。
諏訪湖から天竜川左岸沿いに伊那山地と赤石山脈の間を南西に向かって走っています。三重県松坂を通って、紀伊半島中央部を東西に横断、生駒山金剛山を通り、紀淡海峡を超えて四国を吉野川添いに走っています。

水銀鉱山は火山活動と密接にかかわりがあります。火山活動や活断層は地下から有用な金属鉱物をもたらします。紹介した写真のように地球上の元素は様々な形に結晶して地上に取り出されています。

地殻変動は時には大きな災害ももたらしますが、変化に富んだ登山の後、温泉に入れるなんて日本人に生まれて良かった思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ鉱物水滴、自然、花、地質、鉱物などを載せています。