好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

地球温暖化と雪

紅葉も終盤、標高の高い山々には雪が積もり出す季節となりました。
今朝、本棚から「雪の結晶」岩波写真文庫 B6判 64P を引っ張り出してみました。この本は1950年7月20日に発行され、定価100円だったものです。戦後間もない昭和25年に中谷宇吉郎氏が監修して発刊されたもので、60年経った2010年に再び読み返されているわけです。

雪の結晶01.bmp  雪の結晶02.bmp


終戦直後が7214万人にまで激減したのち急速に回復して、昭和25年の総人口は8320万人でした。毎年3%人口が増えた計算になりますね。49年12月に人事院は7,877円ベースを勧告した記録があります。平成21年の人事院勧告のレポートを見ると391,770円という数字が見つかりました。50倍の差があるわけです。100円の岩波写真文庫は7,877円の1.26%ですが、同じ割合を平成21年の金額391,770円に換算すると4,973円になります。
感心するのは現在と較べようもない混乱と物資不足だった昭和25年にこのような図鑑が発刊されたということです。当時15~20歳歳の青少年は物凄く知的欲求があったのだと思います。現在75~80歳の方々で、2010年のノーベル化学賞に決まった鈴木章・北海道大名誉教授(80)と、根岸英一・米パデュー大特別教授(75)なのも興味深いことです。

 

ところで、半世紀前と違い、地球温暖化で雪害が大きく取り上げられることは少なくなりました。雪を雪山やスキーなどレジャーからの側面で捉えている人も多いと思います。
前回、「雪華図説」のことを書きましたが、1850年頃に出版された「北越雪譜」には雪に関してこのように書かれています。「人が物を見る目の力にはかぎりがある。肉眼で雪を見ると一片の羽毛のようだが、これは数十百の雪花が集まって一片の羽毛のようになっているのである。これを顕微鏡で見ると造化の妙はおどろくべきもので、その形は奇々妙々である。形にいろいろな変化があるのは、上空の冷たいところで雪ができるとき、その大気のうごきのちがいで、雪の形がそれに応じてかわるからである。雪花は六角で六花とよばれる。自然の気の活動でできるものには、すべて陰(偶数=角)と陽(奇数=円)との力がはたらきあっている。雪はこうして角と円との性格をあわせて六花となるのである。」
土井利位による「雪華図説」と「続 雪華図説」は江戸時代の日本人が誇るべき業績を上げたと理解すべきですし、中谷宇吉郎氏が人工雪を詳細に研究したことをもっと知ってほしいと思います。「雪の科学館」は展示だけではなく、実験で人工雪を見ることができる大変楽しい科学館です。

近年、温暖化の影響を示す自然現象は数多く見られますが、今日の日本経済新聞朝刊に次の様な記事が出ていました。
蔵王樹氷、40年内に消滅? 山形大、温暖化の影響調査
山形、宮城両県にまたがる蔵王連峰の冬の風物詩「樹氷」が、地球温暖化の影響で40年以内に姿を消す可能性があるとの研究結果を山形大の柳沢文孝教授(地球化学)らがまとめ10日、山形市で開かれた講演会で発表した。「アイスモンスター」とも呼ばれる樹氷は、針葉樹のアオモリトドマツに強風で吹き付けられた空気中の水分が凍り付き、その上に雪が付着してできる。
柳沢教授らが大正~昭和初期の文献や写真を基に調査したところ、樹氷は1965年まで標高1400メートル以上で観測されていた。その後観測できる地点の標高が上がり、現在は山頂に近い1600メートル付近にまで達しているという。
観測できる時期も1950年代までは12月だったが、現在は2月にずれ込んでいる。柳沢教授は、山頂付近の気温が約80年間で2度以上上昇したと推定。「このままのペースで温暖化が進めば40年以内に山頂の気温がさらに1度上がり、樹氷はなくなってしまう」と警鐘を鳴らした。】

立山カルデラ砂防博物館の飯田氏から教えていただいたことでもありますが、雪に変わる海抜が以前に比べて上がってきているようです。また、2500m付近での積雪量自体は必ずしも減っているわけではないのですが、雪質がずいぶんと変わってきており、登山者にとっても、山小屋経営者にとっても注意が必要になってきていると思います。

例年11月の「勤労感謝の日」の連休には、富山県立山室堂へ初滑りに出掛ける方も多いと思います。気を付けて楽しんで良いシーズンのスタートを切ってほしいと思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ鉱物水滴、自然、花、地質、鉱物などを載せています。