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好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

隆起するアルプス?崩壊するアルプス?

日本列島には火山も多く、地震が多発することからもわかるように活発な地殻の活動があります。温泉も多く、悪いことばかりではありません。
地震が起きれば、話題に上がるのが「断層」です。阪神大震災でも様々な名前の断層が公にされました。

2010年10月10日に発生した北岳バットレス第四尾根 枯れ木のテラス付近の崩壊は新聞報道によれば、縦30m、横幅40m、厚さ20mの凡そ2万四千立方メートルという相当な規模であったようです。
これがCガリー側に崩壊してしまい、通常の第4尾根ルートやDガリー奥壁ルートは通過できない状態のようです。

南アルプスは別名「赤石山脈」といわれるように、南洋でプランクトンが堆積したチャートとサンゴ礁由来の石灰岩、海洋プレートでできた玄武岩が海洋プレートに乗ってやってきたものです。日本列島付近で砂岩や泥岩が堆積し、プレートが大陸に沈みこむ過程で大陸の付加帯と呼ばれる岩石などをめくれあげながら、隆起しています。

北岳バットレスや塩見バットレスなどは主にチャートで断崖が作られています。八本歯のコル付近は泥岩が多く、山頂の北側付近には石灰岩もみられます。雨に濡れた赤いチャートの壁に手こずった人も多いのではないでしょうか。


一方、たおやかな山容の仙丈ケ岳は海溝に堆積した砂岩と泥岩からできています。岩質が柔らかいために削られやすく、丸みのある山容です。
北沢峠をはさんで反対側にある甲斐駒ケ岳鳳凰三山は1500万年前頃に関入した花崗岩からできています。花崗岩の熱で焼かれた熱変性を受けたホルンフェルスが駒津峰や鋸岳方面に見られます。鋸岳からの下降路に良く使われる熊穴沢の岩砕は大変印象的です。

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ところで日本アルプスの隆起スピードはどのくらいなのでしょうか?一説では、南アルプスが隆起しだしたのは100万年前からといわれ、一等水準点がある地点の測定結果では、この100年間で40cmほど隆起したといわれています。1年に4mmくらいです。北アルプスがどのくらいのスピードであるか、はっきり分からないようです。数百年前に三角点ももちろんGPSもありませんから当然かもしれません。
 

29年前の1981年7月には同ルートのマッチ箱のコルが大崩壊したのですが、今回の枯れ木のテラス崩壊も人為的なものとは考えにくいですね。隆起による節理拡大と雨や氷化でよる風化でクラックが拡大した結果、数万トンの岩体を支えきれなかった結果なのかもしれません。

「動かざること山の如し」は孫子の兵法から出た言葉で、日本では武田信玄の軍旗で有名です。
元は「疾如風、徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆」で意味は「移動するときは風のように速く、静止するのは林のように静かに、攻撃するのは火のように。隠れるには陰のように、防御は山のようにどっしりと、出現は雷のように突然に」だそうです。
このように山はそう簡単に動かないものの代名詞として、古来から用いられてきました。風や火に較べれば、まさに動かないものですが、1000年も経てば、数メートルは動いてしまいますし、地震があれば、一気に動き山も崩れます。

これからも私たちは地震や水害、山崩れとは決別できない運命にあります。

ところで、岩石の密度は凡そ水の3倍あります。つまり、1メートル四方で3トン位あるということです。座りの良い巨石は良いですが、不安定なクラックが入った岩石がバランスを崩したときは人間の力ではどうすることもできません。
今回の崩壊が二万四千立方メートルだとするならば、七万二千トン、10tトラックが7200台分ということになります。

あらためて、私たちは自然には勝てないこと、遊ばせてもらっている事を自覚しなければいけないですね。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ鉱物、自然、花、地質、鉱物などを載せています。