好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

カミナリ

9月中頃になってやっと秋らしくなってきました。
夏山に付きものの午後からの雷にドキっとした方はいたでしょうか。


山岳地帯は地形が入り組んで複雑なために、強い日射で暖められた空気が局所的に上昇気流を起こします。3000mもの稜線を持つアルプスの斜面を駆け上がった積乱雲が雷を起こすのです。これは「熱雷」といいます。
範囲は比較的狭く、夏の剣岳別山尾根の平蔵のコル付近で雷鳴を聞いたときに、急いで平蔵谷を下ったことを思い出します。別山尾根は平蔵のコルから前剣を下りきるまでは気の抜けないほぼ稜線の登山道です。
平野部でも夏にはモクモクと湧き上がる積乱雲と夕立ちも「熱雷」です。

積乱雲.jpg

ところが、雷は夏にだけ起こるわけではありません。日本海側にお住いの方は良くご存じだと思います。
山登りをする私たちが注意しなければいけない雷には「界雷」があります。これは二つの気団の境目、つまり前線付近で発達する積乱雲で発生する雷のことです。
前線雷ともいいます。界雷は前線付近で発生するため、季節に関係なく前線の通過によって発生するのです。
山では特に冷たい気団が暖かい気団に向かって移動する際の接触面にできる寒冷前線に要注意です。冷たく重たい空気が暖かい空気を押し上げる形で上昇気流が起きます。積乱雲が発生して雷が発生し、通過後に急激に気温が下がります。
過去、この前線通過後の急激な気温低下による気象遭難は数多く発生しています。これから暖かく日本列島を覆っていた気団を押し返すように西からやってくる冷たい気団がやってきます。
山々は一瞬で秋へ、そして初冠雪の便りが届く季節になるのです。

そして、もう一つの発生パターンは明確な前線はなくても、天気予報で「冷たい空気が日本列島に入り込んできて、天気が不安定になります」という時です。
なぜ、不安定になるかといえば、冷たい空気は重たいのでその塊りが暖かい空気の塊に沈み込むからです。冷たい空気の塊に押しのけられた暖かい空気は逃げ場を求めて上昇するので、やはりここでも積乱雲が発生するので、雨や雷が発生します。

ところで、雷とはどういうものなのでしょうか。
雷とは大気中で大量の正負の電荷分離が起き、一気に放電する現象です。
放電する際に発生するゴロゴロという音が雷鳴で、ピカッという光が電光です。稲妻という表現の方が似合っていますが、学問的には電光というそうです。
雲と地上の間で発生する放電を落雷といい、雲の中や雲と雲の間などで発生する放電を雲放電といいます。

雷は上空高くまで発達した積乱雲で発生します。
雲粒は上昇気流によって吹き上げられ、上に行けばいくほど冷やされ、湿った空気は上空の低い温度の層に達すると「あられ」や氷晶が多量に発生します。
上昇気流にあおられながら互いに激しくぶつかり合って、摩擦されたり砕けたりすることで静電気が蓄積され、大きな(重い)「あられ」はマイナスの電気を帯びて雲の下の方に集まり、小さな(軽い)氷晶(小さい氷のつぶ)はプラスの電気を帯びて雲の上の方に集まった結果、電荷の分離がおきるので雷が発生するのです。
たまったプラスの電荷とマイナスの電荷が大気中を流れ、ピカッと光ります。これが電光です。

大気中を電気が流れる瞬間、空気の温度は一気に10000度くらいまで上がります。この熱で空気が音速を超えるスピードで急激に膨らむ衝撃波の音が雷鳴です。

光は、1秒間におよそ30万キロメートル、音は、1秒間におよそ340メートルです。ピカッと光ってから音が鳴るまでには時間差から雷雲までのおよその距離を知ることができます。
およその距離を「P(km)」、ピカッと光ってから音が鳴るまでには時間を「S(秒)」とすると、P=0.34S という式で計算できます。
3秒で1km、6秒で2kmです。雷がどのくらいのスピードで近づいているのか、離れて行っているのか、観察した方が良いですね。
9/17のコラムでお話ししましたが、1kmの山道であれば歩いたら1時間くらいです。雷雲の移動スピードを考えれば逃げることより、安全な建物に避難したいものです。
山では稜線やピークからできるだけ低い斜面や谷に下がって、窪みに小さくなってやり過ごすのが良いでしょう。
大勢が子羊のように群れ固まるのは被害を大きくするだけです。

山で役に立つかはわかりませんが、気象庁が「雷ナウキャスト」というサービスを始めています。
日頃から、天気に興味を持てば、山にもきっと役に立つと思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPには、自然、花、地質、鉱物などを載せています。