好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

靴に使われる革の種類

30年程前、山登りを始めたころ、恐る恐る覗いた登山用品店には今のような軽快なタイプはなく、茶色の表革の登山靴が定番だったと思います。
イタリア製の登山靴で「銀付き革」と呼ばれていたものです。「皮に傷を付けずに、しっかりと革が厚くなるまで成長すさせるのは大変なのだ」と聞かされたのを思い出します。
本格的な登山靴の値段はその当時と現在でも大きな違いはないのではないでしょうか。四半世紀以上前の給与水準を考えると大変な高級品だったと思います。

今は皮革の丈夫さと化学素材からできた生地を組み合せ、更にはゴアテックスなど透湿防水膜をラミネートした様々なコンセプトの登山靴を選ぶことができるようになりました。
今回は様々な名称で使われている皮革について調べてみました。

牛だけでなく鞣す前の動物の皮は外側から順に毛がはえている「表皮」、タンパク質が主体の真皮、肉と接する「皮下組織」の3層構造をしています。鞣して「革」として利用されるのは真中の「真皮層」で、外側から上部を「銀面」、下部を「床面」と呼びます。銀付き革とはこの「銀面」をそのまま活かして表面とした革のことです。
銀面は革を構成する部位の中では最も組織が細かく、丈夫で柔軟性も高くなるので、それを表面として素直に活用できるこの革は、鞣しの種類を問わず原皮の持ち味を一番活用できるのですが、傷や虫刺されの痕跡もそのままダイレクトに表面に出てしまうということを意味します。
逆に言うと銀付き革になれるのは、一般的には銀面にクセやダメージの少ない上質な原皮のみ、つまり革の中では選りすぐられたエリートといえます。

表革20100915.JPG

銀面を裏使いで製品にする事があります。いわゆる裏出し革です。最近はラフアウトレザーといわれています。製品の裏側に銀面を残したままなので、傷に強く汚れが目立ちにくく、革本来が持っている防水性があります。
ちなみにバックスキンとは『オス鹿=BUCK の革の表面』をヤスリなどで、ビロード状に起毛させた革のことをいいます。私は長い間、バックスキン=裏出し革と勘違いしていました。

ヌバック・レザーとは、革の表面を「目の細かい」サンドペーパーやヤスリ等でこすって、「起毛」と言うよりも「均質に削る」と表現した方が適切な加工をした革です。ヌバック仕上げは、スエードと比べると『毛足が短く、しなやかで柔らかい肌触りをもつ』というのが特徴。
銀面を削るので、例えば原皮の表面に残っているシワ模様や傷・虫刺され痕等を消し隠すことができ、それらのある部分を途中で取り除く必要が無くなるので、多少工程が増えても製品としての「革」の歩留まりを高められるのが特徴です。よって価格も銀付き革に比べれば安く、大量にかつ安定的に供給が可能なのです。
ヌバック・レザーの由来は、「NEOバック( 新しい BUCK )」が語源とされ、今日では貴重となってしまった牡鹿の銀面を同様に起毛させた「バックスキン(Buckskin)」をイメージしてつけられました。
最近の登山靴の多くはこのヌバックレザーの内側にゴアテックスライナーをインサートしたものが増えています。

ヌバック20100915.JPG

登山靴に使われている革の種類をいくつか紹介しましたが、山から帰ってきたら、中敷きを取り、大きな汚れは水洗いして落としています。靴が湿っていれば新聞紙を丸めて押し込み吸い取らせます。
日陰で干した後に、防水性の高い専用クリームを擦り込みます。油分が抜けてカサカサしてきている場合は、栄養分の多いクリームを塗ります。しっかり手入れをするつもりであれば、靴ひもをすべて外してしまって作業をする方が良いでしょう。

すべて革でできた登山靴は少なくなりましたが、メンテナンスを行うことで靴への愛着がわいてくることでしょう。

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登山研修所友の会
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宜しくお願いします。