好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

日本は世界にまれな強風域

しばらく、パソコンをさわれる環境になく、更新ができませんでした。

9月の第三週になってようやく夏の終わりを意識することができるようになりました。北の乾いた高気圧からの風が入り込むと爽やかになるのですが、前線が発生すると「秋雨」の季節となります。南から来ている暖かく湿った小笠原気団と北からの冷たく乾いたシベリア気団とがせめぎ合う「隙間」に偏西風が入り込み易くなります。寒冷前線を伴った低気圧が日本列島で停滞してしまうのが「秋雨前線」です。台風の動き次第では豪雨となるので注意が必要です。

秋雨前線が発生するこの季節、高い山々では前線の通過後に、雪に変わる微妙な時期になります。高い山に行く方は、身体は夏対応と自覚してウェアには気を使う季節でもあります。

今回は、日本が地球上の中でも特異な地域で、世界に誇るべき自然環境あるというお話をしたいと思います。

大陸の東、極東に位置する日本の上空では冬期、偏西風帯を流れる寒帯ジェット気流とヒマラヤの南を迂回してくる亜熱帯ジェット気流が合流しています。そのため、日本アルプスは3000m級でヒマラヤ山脈などの6000m~8000m級の山々のような派手さはありません。しかし、強烈な風が吹き荒れることにかけては第一級です。

以前、海外で優れた実績を持つ友人と冬の剣岳八つ峰に出掛けました。途中で敗退したこの山行の12日間中晴れたのは入山日と下山日位でした。下山後、その時に行った「冬の剣岳八つ峰」が一番大変であったと彼は話してくれました。山の困難さは気象に大きく左右されるのを実感しました。


日本海で水分をたっぷり補給した冷たく湿った風が脊梁山脈に吹き付け、吹き上がり山々に多雪をもたらします。
地球温暖化が指摘されてから多くの時間が過ぎています。現れた現象の一部のみを見て「だから、こうなのだ。」と言い切れない難しさはありますが、山に行って感じるのは雪の降り方、積もり方が変わったことです。積雪とは字の通り「雪が層構造に積み重なる」ということですが、どうも最近はドカっと降って、一休みというパターンなどが増えているような気がします。

もう一つ、専門家に聞いた話ですが、日本列島にもたらされる雨や雪は「減っていない」らしいのです。海水温が上がることで大気へ供給される水分は増えているのが原因のようです。ただ、気温は上昇しているため、冬期に雪になるか、雨になるかの境界ラインは高度を上げているため、2000m前後の山々の積雪は少なくなっている傾向のようです。

日本海側の山々と北部北アルプスにたくさんの降雪があるのは山登りする方には良く知られています。
日本アルプスが岩稜・岩塊地、ハイマツ帯、雪田、雪渓、高山植物の生える「風衝地植物群落」、裸地、など変化に富んだ景観になったのには、多雪に加えて、先に述べた理由で強風が吹くので、吹き溜まりと吹き払いの積雪分布の不均一が生じるのも一因だといわれています。


立山室堂地域の積雪に関しては、立山カルデラ博物館の飯田肇氏が長年にわたり調査研究され、その研究を発表されています。
立山からさほど離れていない大日岳頂上付近には30~40mの規模の吹き溜まり雪庇が毎年発生します。個人的に関わりの多いこの大日岳の山容と積雪をみて感じたのは、山の器(うつわ)に応じた積雪があり、その積雪がその場所の地形や植生に強い影響を与えているということです。


私の考えはつぎの通りです。風下に大量に溜まった積雪は遅い時期まで残ります。吹き溜まり雪庇の残骸の雪渓は地面を圧迫し冷やし続け、植物の侵入を防ぎ「裸地」を形成します。「裸地」は土壌保持能力が低いので、積雪荷重で少しづつ下方へ「地滑り」を起こし、階段状の凹地ができてきます。こうやって長い年月掛けてつくられた凹地を含む風下斜面全体が、多くの積雪を受け入れる器(うつわ)になってきたのだと思います。


大日岳の雪庇調査により、雪庇の概念が改めて認識されたと思います。
いたずらに恐がることなく、なめてかかることなく、山に出かけたいと思います。

 

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登山研修所友の会
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宜しくお願いします。