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好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

デイジーチェーンと自己確保

登山用品店のクライミング用品売り場に必ずある「デイジーチェーン」この商品を使っての自己確保に関して、興味深い実験を行ったことがあるので紹介したいと思います。


デイジーチェーンは人工登攀=エイドクライミングの補助用具として、日本に紹介されました。
ライミング中のビレイポイントや剣岳別山尾根のハシゴや鎖場で自己確保を取りながらの登下降する時に、長さ調節が容易なためか、転滑落を防ぐ目的で使う方が多いのも事実です。
デイジーチェーンに限らず、ダイニーマ製やナイロン製のスリングを自己確保に使用し、それを「弛ませた状態」で起きる「えっ!そんなに」という危険についてお伝えします。

前置きとして、「落下率」という事の理解があると大変望ましいのですが、ここでは自分が60cmダイニーマ製ソウンスリングと安全環付カラビナを使って、支点(鎖や杭)に連結した姿を想像してみてください。
その時、鎖と腰の高さがほぼ同じ高さで、スリングは「U 字」に弛んでいる状態の時、足を滑らしたらどのくらいの衝撃が自分自身にかかるのでしょうか。この場合は落下率1となります。

実験の前提条件は次の通りです。
体重80kg、落下率1、ダイニーマ製60cmソウンスリングを使いました。

測定器具にて出た衝撃値は何と、最大で 1164kgf  となりました。体重が80kgの凡そ14倍にもなってしまうのです。

なぜ、こんなに大きな値が出たのでしょうか。ロープクライミング時における落下率と衝撃値の話は別の機会に譲りますが、ダイニーマ製ソウンスリングはほとんど「伸びない」事が原因です。
ぶ厚いマットレスとコンクリートに卵を落としたのと同じです。8/2「クライミングロープについて」で書きましたが、クライミングロープは「衝撃吸収能力」が命なのです。
ライミング用に作られているスリング自体には、「衝撃吸収能力」はないのです。

参考までに同様な条件で
60cm になるようにデイジーチェーンの途中にあるポケットにカラビナをかけての結果は2つのポケットの縫い目が破断してしまい、かかった衝撃値は最大で548kgfでした。
又、ハーフロープ直径8.8mmを使った場合は最大で670kgf となりました。

以上の実験について、詳しくはこちら

ここから、私たちが知っておかなければいけない点は何なのでしょうか。
①:自己確保では、スリングは可能な限り「弛ませない」様に調整しなければいけません。
②:デイジーチェーンのポケットの縫い目は 3KN で「破断する」ので、複数ポケットを一つのカラビナで支点にかけてはいけません。
③:支点はより高い位置にあることが望ましい。

自己確保は大変重要なことですが、繋がっているというだけでは「安全」を確保できないということを知っていただきたいと思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPには、自然、花、地質、鉱物などを載せています。