好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

山で役立つ高度計

GPS が個人の持ち物になり、アウトドア系腕時計にも高度計がつく時代なので、今回は高度計の仕組みを調べることにしました。

高度計の用途として、時間当たり標高差がどれくらいで登っているか。冬、視界が悪い中を下降しているとき、あと何百mで地形や尾根が変化するはず。など登山中に予測を立てたり、地形図とコンパスを補強するルートファインディングに用います。

  1985年ガッシャーブルムⅡ7600m辺り

1985年に行ったパキスタンヒマラヤ ガッシャーブルムに行く計画が進んでいたころ、「高度計は必要だ!」ということで街中で探して見つけ購入したのがアネロイド式気圧・高度計でした。30年近く前なので今は当然同じものはないようですが、まだしっかり動きます。

 株式会社いすゞ製作所製 4500mまで使える ALTIMETER です。

ガッシャーブルムは標高8000mを超えるので、出かける時に持って行ったのは THOMMEN の9000m対応の高度計でした。樹脂部分が随分と黒から灰色になっていますが、こちらも今でもしっかりと動きます。標高の低いところからエベレストの頂上まで、幅広い温度域でも内蔵のバイメタルなどで補正して安定した精度で表示するものです。と信じています。

 スイスのTHOMMEN社は航空機の高度計などを作る歴史ある会社です。

さて、昔話はまたの機会として。高度計は気圧計と同じもので、その表示方法を変えているということはご存じだったでしょうか。

先の紹介した二つの機器はアネロイド式気圧計・高度計というものです。このアネロイドとは「液体を使わない」という意味です。なぜ、わざわざ液体を使わないというかといえば、昔、教科書に出ていた「水銀柱」で大気圧を図っていた図を覚えていますか。私たちがいう気圧は「大気圧」といって私たちの体にかかっている「大気の重さ」です。

それを常温で液体である水銀を利用して測る機器が水銀気圧計です。水銀の比重は13.595です。一気圧(atm)は760mmHg、乱暴に言えば水銀プールに片側が閉じた菅の中に詰まった水銀が760mm を指し示すわけです。詳しくはこちらを参考に。山賀 進先生HPに詳しいです。

私たちが天気予報でよく聞くヘクトパスカル ですが、水銀を水で置き換え、重力加速度g=9.8m/s^2 を加味したものです。1013hPa が標準大気圧というものです。念のためざっくりと水銀が及ぼす力を計算してみると。合っているといいですが間違っていたらごめんなさい。

0.76m × 13.595 g/cm^3× 10^3 × 9.80665m/s^2 = 1013.2427 × 10^2  Pa (パスカル)    良く聞く hPa(ヘクトパスカル)は 100Pa= 10^2  = 1hPa です。

では、気圧計の簡単な原理です。これもざっくりと言ってしまえば、バネを入れ釣り合わせている「真空の缶(アネロイド)」にアナログメモリを連動させたものです。山に登って標高が上がると自分にのしかかる空気の厚みが小さくなるので「缶(アネロイド)」は膨らみます。同じことは低気圧が来ると「缶(アネロイド)」は同様に膨らむわけです。

ということは、山小屋にじっとしているとき、高度計の標高が上がるということは低気圧が近づいてきたということですね!おっと、これは晴雨計かも。

ですから、高度計をより正確に利用しようとするならば、登山口や山小屋、三角点などで高度を補正しなければならないのです。上の二つは針と高度メモリをを回転させ合わせるだけですが、アウトドア腕時計の高度計はそれぞれ説明書で確認してください。

 表示 私がいつも使っている時計です。

次に現在主流のアウトドア腕時計の気圧計センサーはどうなっているのでしょうか。小さな腕時計に「缶(アネロイド)」は入れられないので、ダイヤフラムという真空の空洞上にある薄いシリコン面がたわむと、電気抵抗値が変化するのを利用しています。

ところで、気圧変化は測ろうとしている環境の温度や湿度によって誤差が生じます。つまり同じ山同じ場所であっても真夏と真冬ではその誤差の大きさが違うのです。この誤差はどのメーカーのものであっても等しく影響を受けるわけなので、、登山で積極的に高度計を活用する場合はできるだけこまめに既知の地点で高度補正を行うと良いですね。

でも高度計自体の誤差は気圧計センサーや回路設計、気圧から高度への変換アルゴリズムで差はあるようです。気圧・高度計単体を製造しているメーカーは「看板」を背負っているので信頼性が高いかと思っています。ただ、自分の持つ機器の誤差を知ることは良い事ですが、登山行為はもっと様々な要素を考慮して自分自身で判断するものです。

登山道が雪で隠れてしまう季節です。積雪によってもともとあった地形は「積雪地形」となり大きく変容します。地図、コンパス、高度計そしてGPSも活用して雪山に出かけてください。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPでは、キノコ、自然、花、地質、鉱物などを載せています。