好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

ブナといえば雨飾山を思い出す。

以前、秋に訪れた時に大きなブナの大木の下にブルーシートを敷き、実を集めている人たちがいました。話を聞いてみると林業関係の方たちで、当たり年にこうやって、ブナの実を集めているとのことでした。
その時は何のために集めているか深くは詮索しませんでした。当時、林業関連で広葉樹林がその役割について再評価されだした頃だったので、それを使って実生苗を生産するのだと思っていました。
ブナが似合うのは冷涼な土地、雪深い地ではないでしょうか。ブナを訪ねる山旅をすると、日本海側の雪深い山ではブナの純林が多いような気なします。一方、中部山岳地帯の前衛山塊ではミズナラなどが混じるような気がします。

ところで、ブナの種類について私は、イヌブナとブナの二種類だと思っていたのですが、世界には約10種類ほどあるということです。
イヌブナとブナとの違いですが、ブナは幹が比較的すらっとしていて、基本的に1本で立ち上がっています。これに対してイヌブナの方は自然の状態で、伐ったわけでもないのに株の根元付近から萌芽によって何本も何本も幹を増やしていき、枯れるとまた小さなひこばえが大
きくなるといったかたちで成長していきます。

同じ日本のブナでも北海道南部の渡島半島から九州南部鹿児島まで、日本海側、太平洋側の両側に広く分布し、様々な変異があることが知られています。
日本海側のブナの葉は大きく肉薄で太平洋側のものは葉が小さく肉厚です。日本海側のブナはすらっとしており、太平洋側のブナは低いところから大きく広がり枝分かれしているものが多いようです。

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実はイヌブナは日本海側には分布には分布しないようなのです。これは雪が分布の制限要因になっていると考えられます。
このように日本は南は九州から北は北海道まで幅広い気候があるだけでなく、太平洋側と日本海側で大きく積雪量が違うのが、植生に影響を与えているようです。

先日、飛騨の山に行った時、昨年がブナの当たり年であったのか、沢山の実生苗が下草に負けじと生えていました。ブナは長寿であり、日陰に強い木といわれています。幼樹は自分の廻りに光が差し込むのを、運動会の徒競走のスタートのように待っているようでした。
この山はブナの純林ではなく、ある一部の一帯に優先的に生えているようでした。

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雪とブナはどのような密接な関係があるのでしょうか。
 ブナの実が冬の乾燥した季節風や低温に曝されないですむこと。
 実が雪に覆い隠されると、ネズミなどに食べられる危険が減ること。
 同様な理由で、シカに食べられる危険が減ること。
 雪があると笹などの下草が雪に押さえられるので、地表があかるくなり成長に有利になること。
 雪解け水が豊富に水を供給してくれること。
 雪の多き山では山火事が少なく、より成長の速い樹木の侵入を抑制できたこと。
などが考えられるのです。

六甲山にもブナはありますが、この種類は北陸や東北の種類とは違う、所謂、変種であるようです。

植物の分布は長い歴史があり、氷河期など大きな気候変動の結果が写真で切り取られたようなものです。人類の急激な膨張や気象の変動は植物や動物の変化のスピードとは明らかに違っていると思います。

しかし、6500万年前の巨大隕石の衝突で恐竜が絶滅したように、種の急激な絶滅や進化は隕石のような破滅的な外的要素によるところがあるのでしょう。

富山のツキノワグマが引っ掻いた爪の跡です。称名の滝下です。

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