好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

蛇紋岩質土壌と植生

高山を歩いていると、その土地特有の植物に出会う事があります。
以前紹介したコマクサは花崗岩が風化した砂礫に生えます。日本の国土の多くを占める花崗岩は酸性土壌です。ところが、日本の山地には当然、違う質のものもあるという話です。

北アルプスの最北端、花で有名な朝日岳から兵馬ノ平を通って、蓮華温泉に下った時のことです。
「青ザレ」という地帯がありました。岩石は幾分か層状になって、若干ぬめった感じの暗緑青色でした。この石は何なのだろうと長く思っていました。
記憶ではこの辺りにはシロウマアサツキがたくさん生えていました。調べてみるとこの花は蛇紋岩質の地域に生える事が分かったので、もう少し調べてみました。

似た岩質の山では八方尾根はも蛇紋岩質土壌で特異な植生が見られます。
固有種が多くて有名な岩手県早池峰山(1917m)も蛇紋岩土壌が特徴です。この特異な成育環境の中、独自に進化したため、ここにしか生育しない高山植物が数多くあります。代表はハヤチネウスユキソウでしょうか。
尾瀬の至仏山(2228m)も蛇紋岩に覆われた塩基性土壌の山です。

ところで蛇紋岩とはどのような岩石なのでしょうか。マグネシウムを多量に含む超塩基性岩で暗緑色から黄緑色で、ヘビの皮の模様をイメージさせる模様があります。
他にクロムやニッケルを含んでいることが多く、ニッケルは時として植物に障害を与えますし、多量に含まれるマグネシウムが植物の水分吸収能力を低下させるとも言われています。
このような特異な化学組成に耐えることのできる植物や根の浅いツツジ科植物、アカマツなどの乾燥に耐えることのできる植物などが生える貧弱な植生となります。
植物間の生存競争が低いので、早池峰山のハヤチネウスユキソウなどの固有種など生き残っています。

可憐に咲く高山植物を見る時、そこの土壌に目を向けてみてはいかがでしょうか。


蛇紋岩が風化した土壌は、粒子間の結合が弱く崩壊し易く、水分を含むと液状化や地層の流動を起こします。
湿地になったり、大規模な斜面の崩落や地滑りが発生しやすい特徴があります。
北アルプス白馬岳から北へ三国境を経て、雪倉岳付近はなだらかな山容ですが、穏やかな山容に似合わず、地滑り地形であることを知りました。
私は二重山稜、池塘などは雪が多く降ることが主な原因だと思っていました。実はその土壌の元となる岩が蛇紋岩であるのが大きな要素でありました。
今後の山では足元を注意して歩いてみたいと思います。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPには、自然、花、地質、鉱物などを載せています。