好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

日本の氷河地形

北アルプスの赤牛岳から黒部川挟んだ薬師岳(2926m)の東面直下には浅い圏谷が並んでいます。これらはドイツ語で「カール」と呼ばれています。これは氷河が重力によって流れ下る作用でできたものです。まるでお椀を半分に割ったようで、上部が急で底がなだらかになっていて、削られた岩などが押されてて土手のようになっています。


カールの出口が高くなっているために穂高の涸沢カールなどには池が点在する場合があるようです。
同じような地形には、お隣の水晶岳立山の山崎カール、真砂岳内蔵助カールなどがあります。北アルプスの山歩きをしているとき、空を見上げ稜線の弛みを見て、山全体を眺めてみたら、氷河の名残が見つかるかもしれません。


古い話ですが、1985年にパキスタンのガッシャーブルム氷河を歩く機会がありました。山登りの途中でしたが、一緒に行った友人が岩石に詳しく、以前のキャラバン(登山のアプローチ)で隊荷にせっせと気になる岩石を詰めたという話をしていました。私も、気になる石を一期一会と思い拾っていました。


2㎏はありそうな氷河に削られ磨かれた筋の入った岩石があり、結局日本まで持って帰りました。それは今でも家にあるはずですが。その時は気になっただけで拾ったのですが、25年経って合点がいく話を知りました。


それはどうやって氷河が岩石を削り取るかということです。
雪は積もって圧縮されて密度が高まっていきます。氷河ができる気象環境であるという前提ですが、さらにさらに積もって圧縮されていくと氷となっていきます。それと同時に山の斜面を重力にひきずられて、谷を埋めゆっくりと流れ下るのです。


実はここまでの知識は何となく覚えていましたし、ヒマラヤの氷河のクレバスや日本の雪渓に生ずる裂け目を見て実感していました。


ところが、どうしても岩を剥ぎ取るという表現がしっくりこなかったのですが、以下の話は私にはよく理解できたので紹介したいと思います。


そのメカニズムはこうです。


谷一杯に埋め尽くした氷は谷をゆっくり下ります。とてもたくさんの氷は大変な圧力を谷底の岩盤や側壁にかけます。氷河の底の氷には圧力がかかっているので、氷は0度よりも少し低い温度で融けます。これを「圧力融解点」といいます。
氷河の下に岩の出っ張りが隠れていると、岩の上流側ではより大きな圧力がかかるので氷河のそこが融けて岩の表面に薄い水の膜ができます。それが潤滑油の役割を果たし、氷は割とスムースにそれを乗り越えます。
氷が岩の出っ張りを乗り越えると、圧力が抜けて、「復氷」という現象が起きて岩と氷が、再び氷ついてしまいます。氷河全体は大きな塊として動いているので、氷河に凍りついた岩石はその氷河の動きで下流側に剥ぎ取られてしまいます。


ざっと、このようなという話でした。


長い年月をかけて形作られたこのような地形は世界中にあると思いますが、岩登りをする人ならば「ヨセミテ渓谷」を思い浮かべることでしょう。残念ながら、日本にはこのような地形はないようですが、もしかしたら、見つけることができるかもしれません。 


山歩きの楽しみにはいろいろなものがありますから、この夏はぜひ、こんなことも心の片隅に置いて北アルプスを登ったらいかがでしょうか。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPには、自然、花、地質、鉱物などを載せています。