好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

クライミングロープについて

登山用品店店頭で販売しているクライミングロープを見たことがあるでしょうか。
エーデルワイス社、ベアール社、マムート社などから50mや60mの長さの様々な太さやタイプが出ています。
ライミングで使うダイナミックロープの重要な性能を挙げるとしたら、「ロープが伸びる」ことです。
UIAA(国際山岳連盟)の基準によって、ダイナミックロープは、シングルロープ、ハーフロープ、ツインロープの三種類に分類されています。
各メーカーはスタンダードフォールテストをクリアすることが求められています。
スタンダードフォールテストとは落下係数1.77 、重さ80kg(ハーフロープは55kg)で行われます。このテストで衝撃値(インパクトフォース)を測定し、シングルロープ(一本使用)とツインロープ(二本使用)は12KN 以下、ハーフロープ(一本使用)は7KN 以下になるように規定されています。
その他に耐墜落回数、伸び率などが計測されています。商品についているスペック表には必ず書かれていますので、購入時の目安にしたいものです。
墜落の危険があるクライミングで使用するロープの取り扱い説明書になぜ、衝撃値(インパクトフォース)について書かれているのでしょうか。
詳しい理論については別の機会に譲りますが、簡単にいえば、高い所に登って生じた「位置エネルギー」は、墜落する時に放出しなくてはいけません。
ロープがなければ、地面に激突して体が損傷してしまいますが、地面の上に十分な厚みのあるマットレスあればどうでしょうか。たぶん死なないかもしれません。クライミングジムやボルダリングで目にする「マット」はこの考え方ですね。
では、アウトドアでのクライミングではどうでしょうか。マットレスの替わりにクライマーを守るのがダイナミックロープなのです。
販売されているロープや確保器具(ビレイデバイス)を適切に使用することで、クライマーとビレイヤーを守ることになります。ロープが「ばねの様な効果」を発揮することとビレイデバイスをロープが30~50cm 流れることで衝撃を和らげます。

実際にクライミングを行う場合にはアンカー構築、適切なランニングビレイなど知っておかなければならない点があります。これらに関しても今後、触れていきたいと思います。

ロープの取り扱いについて守ってほしいことがあります。
素材はナイロンでできています。ですから、速さ過ぎる懸垂下降では、摩擦で発生した熱でナイロン自体を熔かしてしまうことがあります。表面が硬くなったロープを見たことはありますか?
岩角などではロープ切断の危険性がありますので、岩角に当て布をしたり、ローププロテクターを使用してください。
ロープを無造作に地面に置き、外皮(シース)に砂が入り込みロープを傷めてしまいます。ロープバックの上で使用するのがベストです。
一般的な注意ですが、熱、紫外線、薬品、バッテリー液などの酸、有機溶剤塗料などは強度を低下させる原因となります。

ロープの使用限界ですが、ダイナミックロープの持つ十分な弾性力を保っているかが大きなポイントとなります。(静的破断強度の低下を心配する以前に大切なことです。)
もちろん、大きな損傷(大きな落下、落石など外的、熱的、化学的)で目に見える形で傷んでいる場合は速やかに廃棄する必要があります。
月に1~2回程度の使用で2~3年で更新するのが望ましいでしょう。

最後に店頭でロール販売している各種太さのロープについて触れておきたいと思います。
ライミングで衝撃がかかる支点に使用するスリングに加工して使用して良いのは、破断強度が1000kgf程度ある、太さ 7mm 以上のものだけです。
ちなみに現在販売されているエーデルワイス社アクセサリーコードの静的破断強度は次の通りです。
1mm / 35kgf程度  2mm / 80kgf程度  3mm / 180kgf程度 4mm / 320kgf程度 5mm / 500kgf程度  6mm / 720kgf程度  7mm / 980kgf程度  8mm / 1280kgf程度  9mm /1620kgf程度
切売の8mmや9mmロープがクライミング用ダイナミックロープ(50mや60m)と大きく違うのは、先に述べた衝撃値(インパクトフォース)などのスタンダードフォールテストを行って、保証していない点です。クライミングロープメーカーは、ロープが切れるかどうかではなく、クライマーの壊れないことを考えているのです。ですから、単価×メートルでの価格重視で考えるのは「賢いクライマー」とは言えません。

テントの張り綱や物を吊るすのであれば細いロープで良いでしょう。しかしながら、もしもの為に持っていくのであれば、7mmのロープを20m程度は持っていきましょう。


注意ポイント。
1:細いロープほど岩角などで切れ易いです。細すぎるロープは手の中で握ることは難しいです。つまり、用途に合った太さを選びましょう。
2:太さに因らず引っ張った時、切れる箇所は「結び目」です。ここが弱点なのです。つまり、静的破断強度より小さい値で「結び目」から切れるということです。継ぎだらけのロープが本来の使い方から、大きく逸脱しているのは言うまでもありません。
 

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