好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

コマクサ(駒草)はパイオニア

登山するものにとっては人気の高い高山植物でケシ科の多年草です。名前の由来はその花の形が馬 (駒) の顔に似ていることからつけられたようです。花の色がピンクなので女性に人気があるのだと思います。

葉は根生葉で細かく裂け、白く粉を帯びています。花期は7~8月です。地上部からは想像できないような50~100cmほどの長い根を張っています。

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私が最初に見たのは北アルプス白馬岳でした。生育している場所は他にもあり、同じ北アルプス乗鞍岳、蓮華岳や八ヶ岳の硫黄岳、稲子岳、北海道大雪山でも見ることができます。共通しているのは花崗岩流紋岩が風化作用で砂礫化した場所ということです。

一見堅くて丈夫そうな岩石ですが、地中深くゆっくり固まってできた花崗岩などの深成岩は様々な成分が結晶化しています。御影石に代表されるように表面を磨いたものは色や模様の美しさから石材として昔から利用されてきました。綺麗な模様の元である様々な結晶、石英や長石や雲母などはそれぞれが持つ熱膨張率が違うために、一旦地表に露出すると水分の凍結作用や岩石は膨張収縮等によりバラバラになり易いのです。見事なオブジェで山岳写真好きなら一度はシャッターを押すと思われる燕岳をイメージすると分かりやすいかと思います。

砂礫の斜面では風や地球の重力によって、砂礫が下へ転がっていくので、植物が育つベースである土壌が移動したり崩壊を繰り返し安定しません。しかも、言わば生まれたての砂ですから栄養分ほとんど含まれていません。下の写真はそんな痩せた砂礫に芽生えたばかりの一年生と二年生です。明け方の冷え込みで生じた結露を大切に利用しています。

登山道から目立つのは可愛い花をつけた親ばかりですが、登山者がうかつに登山道以外の砂礫地に入り込むと小さなコマクサの赤ちゃんを枯らしてしまうことになります。折角たどり着いた北アルプスの稜線、時間に余裕をもって丁寧に歩いてみてください。

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美しい花と、常に砂礫が動き、他の植物が生育できないような厳しい環境に生育する事から「高山植物の女王」と呼ばれていますが、実態は未開の地に根づく先駆植物、パイオニアなのです。しかも、他種の侵入が難しいので、コマクサは大群落となる多いのです。女王様がたくさんいるけれど、家来がいない少し淋しい女王様なのです。

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昔は、花の美しさよりも薬草としての価値が高く、腹痛の妙薬としてして、トウヤクリンドウと共に乱獲されました。薬効があるということは裏を返せば毒草ということです。成分としてディセントリン、プロトピンなどを含み、嘔吐・体温の低下・呼吸麻痺・心臓麻痺などの中毒を起こすようです。今時、採取する不届き者はいないでしょうが。

北海道大雪山にのみ生育する天然記念物のウスバキチョウの幼虫は、コマクサを食草としているそうですが、毒を体に入れて天敵から身を守っているのでしょうか。

高山植物の女王も、御岳ではかつて「オコマグサ」という名で、登山記念として一株一銭で登山者に売られ「一銭草」とも云われた時代もあったということです。

登山研修所友の会には役立つ情報がたくさんあります。

加藤ガイドのHPには、自然、花、地質、鉱物などを載せています。