好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

オトギリソウ

オトギリソウ

夏山に出かけた時、中腹の日当たりのよい斜面でよく見かけます。花自体は雄蕊が花火のように目立つ黄色い花なので、きれいだなぁ ぐらいにしか見ていませんでした。しかし、花の名が 弟切草 です。次男坊の私は少し気になったので、調べてみました。私が見た写真のオトギリソウは イワオトギリ というタイプだと思います。

イワオトギリ.jpg

オトギリソウ(弟切草/生薬名:小連翹(しょうれんぎょう)/学名:Hypericum erectum)は、オトギリソウ科オトギリソウ属 の多年生植物です。世界の温帯にはオトギリソウの仲間が300種類もいるそうです。

漢方の世界では、全草を8~10月の果実が成熟するころ刈り採り天日で干して乾燥させ、これを生薬(しょうやく)とし、小連翹(しょうれんぎょう)と呼んでいるようです。薬効は専門家にお聞きになると良いかと思います。

気になるオトギリソウの由来です。そのお話はこうです。
平安時代(794年-1185年/1192年頃と言われています。)に晴頼(せいらい)という鷹匠(たかしょう)がいました。薬草を用いて鷹の傷を治すことで有名でしたが薬草の名は秘密にして決して口外しませんでした。ある日、人のよい弟がその薬草の名を他人に漏らしてしまいました。これを知って晴頼(せいらい)は怒って、弟を切ってしまいました。」そのときに庭に栽培していた薬草に弟の血潮が飛び散り、その跡が葉に残っていてオトギリソウの名がついたとされています。

この物語が記されたのが江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)(1713)」ですから、晴頼さんが生きていたのが平安時代の終わりとしても、言い伝えを500年後に書き記したことになるとは驚きです。平安時代は390年程続いていたことも考えるとすごいことだと感じてしまいます。
今のように情報過多ではないので、余程、重要な薬草であったので庶民に正しく情報伝達をするために、インパクトのある話に仕立て上げたのでしょうか。それとも医者という特権階級が重要な薬草と知られないように「兄弟殺人事件」に仕立て庶民から遠ざけたのでしょうか。

セイヨウオトギリソウは別名 セントジョーンズワート(セント・ジョーンズの草)とも呼ばれています。中世ヨーロッパでは「悪魔を祓うといわれ、ケルトの祭日には聖人セント・ジョンの像に飾られるそうです。

薬草である一方、私たち登山者としては毒草であるという認識も必要です。昔から薬と毒は紙一重といいますから。
毒成分と言われているのはヒペリシンといわれる一種の色素毒です。黒紫色素のヒペリシンは紫外線を強く吸収して、生体内における光化学反応を異常に促進するものです。
オトギリソウを食べた牛や馬が太陽光線に当たると、強い皮膚炎を起こし、脱毛し肉質も落ちてしまいます。マウスにオトギリソウを与える実験では暗所では正常なマウスが日光に当たると急に痙攣(けいれん)を起こして死んでしまいます。これもヒペリシンの作用と考えられます。

様々な作用を及ぼす成分が含まれる野草を「天然だから安心」などという幻想で口にしないよう注意したいものです。

加藤ガイドのHPでは、キノコ、自然、花、地質、鉱物などを載せています。
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