好日山荘 ガイドコラム

好日山荘契約ガイドによる山のコラム

秋冬服の出番

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20161012101953j:plain

冷えて来ました。

山も夏向けの服から冬向けの服に変える頃です。

山の道具と共に服も年々進化していて、軽量化、快適さが増してます。

これから私の中で出番が多くなる服のひとつに

 

ソフトシェルジャケット

  フリースだと風を通す、雨具だとゴワゴワして動き辛いという短所

  がないジャケットです。ゴアウインドストッパーが代表例です。

  通気性もあり、多少の撥水性もあります。

 

化学繊維の保温材が入っているジャケット(中間着にもなります)

  ダウンだと濡れたり乾きづいらい、穴が空いたらダウンが漏れる、

  という短所がないです。

 

どちらも各メーカー、色々な素材で同じようなコンセプトの製品があります。

マムート、バーグハウス、、パタゴニア等
詳細は好日山荘山荘の各店舗で聞いて下さい。

 

私が今使っているものは
ソフトシェルJKT:マムートの「ULTIMATE ALPINE SO HOODED JACKET AF MEN」(下の写真左)

中綿入りJKT:マムートの「Foraker Advanced IN Jacket Men」(下の写真右)

共にフィット感もあり動作も快適なカットです。

 

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20161012102551j:plain

あっ違った。(handcrafted by くまこ)

 

こちらです

f:id:KatsuhiroYamashita:20161012102616j:plain


カタログからの写真なのでわかりづらいと思いますが。

店舗で色々な製品見てください。

 

登山学校 机上講習 「地図とコンパスに親しもう I・II」

f:id:KatsuhiroYamashita:20161008145130j:plain

読図は難しそうだ、と思われていませんか。

雑誌や本だと盛沢山に書かれているので
それを読むのが大変、理解するのが難しい思われているようです。

私見ですが、全てを完璧に習得する必要はないと思っています。
実際ガイド達も必要最小限で活動しています。

・地形図上で標高、地形が理解できる。

・コンパスを使って方向出し、その逆ができる。

・ルートの概要を説明できる。
・フィールドでミスしやすい地形を経験する。
・ホワイトアウトナビーゲーション表(読図能力の検証用です)が作成できる。
ができると、地図も面白くなります。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20161008145140j:plain

仕事上スイスやアメリカ等海外の山の地図も読みますが、
等高線の間隔(何m)は違いますが、記号等は必要な時に参照するだけです。

あとは自分の中でスケールの違い、植生の違い、その地域独特パタンを

意識に追加すれば問題ありませんでした。

 

「I」では読図での最低限必要な事をやりました

次回「II」では「I」の復習とコンパスの使い方を行います。

1.5hだと少し詰め込み気味ですが、講習後、復習していただけるといいですね。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20161008145854j:plain

日が短くなると、道に間違わないこと→読図がより重要になります。

 

私の山食2

f:id:KatsuhiroYamashita:20160927095355j:plain

日清のカレーメシ(左)。電子レンジまたは煮込み用なんですが、

熱湯で5分位煮れば(山では3分煮て3分蒸す)食べられます。
そこそこ美味しく値段も手頃なので山に重宝してます。

今夏お湯で作れるカレーメシ(右)が新発売となったみたいです。
山に持って行く時はビニール袋に入れ替えます。

 

www.kojitusanso.com

と共に質素な山食にどうぞ。


ちなみ今回のアメリカ滞在中に何を食べていたかというと、

f:id:KatsuhiroYamashita:20160927095622j:plain

朝は毎日同じ。
コーヒー、パンにピーナツバター、果物1品です。

 

行動食はミックスナッツ。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20160927095711j:plain

夕飯は
パスタやチリビーンがメイン。

面倒な時はこんな下品な組み合わせもあります。

カロリーは十分すぎる。

 

 

ヨセミテ国立公園

アメリカのカリフォルニア州にある国立公園です。

クラッククライミング、ビッグウオールクライミングの聖地です。

シルバーウイークを挟んで行ってきました。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20160926215635j:plain

世界で一番大きい花崗岩の塊エルキャピタン。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20160926215653j:plain

造形が素晴らしいハーフドーム。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20160926215709j:plain

基本毎日晴れでクライミング三昧です。
なのでレインコート、傘は持って行きません。

 

f:id:KatsuhiroYamashita:20160926215735j:plain

ハイキングも盛んでバックパッカーの発祥エリアでもあります。

個人的にはシエラネバダの乾燥した山々、土と松の匂いが大好きなんです。

 

 

 

下りはゆっくりと

f:id:asahiryuta:20160917151844j:plain先週はツアー登山のガイドで北穂高と奥穂高にそれぞれ別の日、別パーティーで行ってきました。

f:id:asahiryuta:20160917152011j:plain

報道等で知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、9月に入って早くも3件もの死亡事故がザイテングラードで起こっているようです。私達が北穂高岳に向かう日には北穂高岳で滑落事故(死亡)、穂高岳山荘からザイテングラードへ下山する日には滑落(怪我)と行動中に事故救助の現場に遭遇してしまいました。

これらの事故は全て下りで起こっているようです。

事故がよく起こる場所でありますから、それを防ぐ為に遭対協、近隣の山小屋の方々により安全の為の最低限の鎖やロープがかけられ、ルートを見失わない為に最低限のマークもあります。個人的な見解では数年前に比べよく整備されたという印象があります。

しかし、事故は起きてしまいます。私の主観かもしれませんが、一般的に”ここは怖い!危険だ!→落ちたら死ぬ、怪我をする”と誰もがリスクを認知しやすい場所では皆さん誰もが注意しますので事故は実は起こりにくく、リスクを認知しにくいが実は危ないという場所でよく事故は起こります。

f:id:asahiryuta:20160917152517j:plain

ザイテングラートは、ドイツ語で「支尾根」「側稜」を意味し、涸沢カール上部の標高約2600メートル付近から穂高連峰の尾根に延びる岩の尾根で奥穂高岳への一般的ルートです。岩場に慣れている登山者であればさほど難しい場所でなく、高度感もそれほど無い為、どこが危ないの?と思う方もいるかもしれませんが斜度があり岩がむき出し。滑落すれば、横は崖で尾根から転げ落ちますし、転べばそこは岩の上。また落石の可能性がある場所です。さらに多くの人が歩いていますので岩が研磨され滑りやすい岩も多々あり、特に下りはスリップしやすいので注意をして歩いています。またザイテングラードだけでなく、北穂の一般ルートである南稜も傾斜が強く転倒すれば止まらない注意が必要な場所です。

f:id:asahiryuta:20160917152139j:plain事故は場所だけでなく人間側の理由でも起きるものです。事故は50代後半〜60代のいずれも単独登山者等、理由は色々あるかもしれません。私がガイドしたツアーの参加者は50代であれば若い部類に入ります。

少人数の個人ガイドであればショートロープを行い安全を確保しながら歩く事が出来ますが、多人数となるツアー登山では全員に対してそのような事は出来ません。ツアー登山でのガイド時、下りの際に心がけている事は参加者を焦らせない事、登りと同じくらいゆっくりと歩く、段差を少なくして丁寧に優しく歩く事(ルートも気をつけます)危険箇所や滑りやすい場所は声かけて注意喚起(これは一般的な場所ではなく、私の主観)をパーティーに伝達する事です。指差喚呼によるヒューマンエラーを防止するのと同じです。あたり前の事かもしれませんが、とても大切な事です。

また、山中でも同じパーティーなのに、それぞれがそれぞれのペースで別々に歩いている方をよく見かけます。それ自体が悪い事ではないのですが、声をかけあって歩いた方がリスクハザードをお互いで確認、共有できますし、何より山の楽しみを共有できますよね。

過去の参考になるガイドブログ

井坂ガイドより〜今年の遭難事案の傾向 - 好日山荘 ガイドコラム

島田ガイドより〜穂高の岩稜 - 好日山荘 ガイドコラム

秋山シーズンは気温も下がり、身体の動きも鈍くなってきます。行動前にしっかりと身体を温めたり、休憩時に身体を冷さない様にレイヤリングに気をつけたりしなければなりません。日も短くなり、行動時間は制約を受けてきます。行動時間が短くなると焦りも生まれます。

f:id:asahiryuta:20160917152227j:plain

※9月12日の涸沢。このナナカマドだけ真っ赤になっていました。

またヘルメットは涸沢小屋か涸沢ヒュッテ、岳沢経由の際は岳沢小屋から上部の滑落や落石のある場所に入る前に着用するようにしています。道具や装備、技術など色々な要因もありますが、行動について下りの際に気をつけている事を書いてみました。主観的な内容があるかもしれませんが、事故が起きないように皆さん一人一人が気を付けて秋山を楽しめればと思います。私も今一度気を引き締めて山に行きたいと思います。

富士山 with ミックファウラー

山の日関係のイベントが目白押しだった7月、8月が終わり9月は白馬でゆっくり(仕事はしてますよ!)させて頂いています。

 

少し前になりますが8月に富士山に登ってきました。

ガイドとして何十回も富士山に登ってきましたが、今回は特別なお客様をお連れしての富士登山です。そのお客様とはなんとミックファウラーさん!!

ヒマラヤの未踏峰をいくつも制覇してきた世界的に有名な登山家であり、登山界で最高の賞と言われるピオレドール賞を3度も受賞した登山家の中の登山家。

 

バーグハウス50周年を記念しての来日で、約10日間お世話係、兼通訳として同行しました。どのような方で、どんな登山をされてきたかは是非バーグハウスのHPでご確認ください。

 

そんな著名な登山家が富士山にどんな登り方をするのかなと興味津々でした。

が、結果的には全く変わったところのない普通の富士登山で終わりました。

超人的な速さで登るでもなく、わざわざ難しい岩場を選んで登るでもなく、まさに「普通」に登りました。このことに私はとても感動しました。

 

今年、合計10回程開催した富士山に関する講座でご参加者にお伝えしている「ゆっくり体を動かす」「しっかり呼吸をして」「水分・栄養を取って」「温度調整をちゃんとする」「適切な体の動かし方」「その他いろいろ」を世界的に有名な登山家も実践していました。やはりベテランこそ、がむしゃらな登山をしないという事を再認識できて本当に嬉しくなってしまいました!!

f:id:saruatsushi:20160906142851j:plain

ゆっくり、ゆったり、リラックスして登るミック氏 

 

f:id:saruatsushi:20160906143006j:plain

もうすぐ山頂 大人女子登山部のるんちゃんと。静止画でも体の使い方の違いが良くわかります。(るんちゃん 悪い例みたいに使ってごめんなさい!!とても上手に登ってたよ。)

 

f:id:saruatsushi:20160906143231j:plain山頂にて 立ち姿が本当に絵になる!! 素晴らしい経験ができたとご満悦のミック氏

 

f:id:saruatsushi:20160906143514j:plain

大砂走り 童心に戻って全力疾走するミック氏 若者たちを置き去りにする60歳!!

 

これからは講座で「あのミックファウラーでさえ楽に登るべき大切なポイントを実践して登山されるんですよ!!」と大きな声で言えるなー。説得力が半端ない!!

 

皆さんも、選ぶ山、時間配分、歩くペース、天気、水・食糧等 全てにおいて無理のない楽に楽しめる登山になるように心がけましょうね。

 

 

明日 横浜にてまさに「楽に歩く」為の講座が開催されます。

まだ空席ありますので是非ご参加ください。

「山の道具選びとバテない登山」

http://www.kojitusanso.jp/school/classroom/detail/?p=1088

http://www.kojitusanso.jp/school/classroom/detail/?p=1087

 

木曜日、金曜日は田中担当で宇都宮、つくばで岩場の歩き方講座もあります。

http://www.kojitusanso.jp/school/classroom/?sdt=2016%2F09%2F08&edt=2016%2F09%2F09&ar=&ki=&page=1&mode=serch

 

ご参加お待ちしております!!

今年の遭難事案の傾向

今年も長野県山岳遭難防止対策協会『夏山常駐パトロール隊』の一員として、少ない期間ですが活動しています。

幸いにも今年は死亡事故は減っています。これもヘルメットの着用が一般的なものになってきた効果かなと感じています。

 

しかし近年、パーティーが山行途中で分裂し、そこから遭難へと繋がるケースが増えているように思います。

実際に今年発生したケースを紹介したいと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

AさんとBさんの2名で構成されたパーティーは、目的の山を登り終わり下山にさしかかりました。しかし下山途中でBさんが「足が痛いので先に下りてて」とAさんに言います。AさんはBさんに言われた通り、先に下りて自宅まで帰ってしまいました。

下山した翌日、AさんがBさんに電話しても通じないことから警察に通報。県警ヘリでの捜索が行われ、Bさんは遺体で発見されました。下山途中で滑落したものと思われます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

4人以上のパーティーである程度経験を積んだメンバーがいる場合は、パーティーを分けて行動することもあり得ます。しかし今回の場合は2人だけのパーティーであり、しかも足を痛めている人を一人で置き去りにして自宅まで帰ってしまうというのはあってはならない行為です。

 

これ以外にも、疲労、熱中症や高山病といった、体調管理がしっかりと行われていないのが原因で遭難となるケースも増えてきています。

高山病で行動不能となった遭難者の背負い搬送。

f:id:isakamichihiko:20160906122425j:plain

 

長野県警ヘリ「やまびこ1号」によるホイストでの救助。
警察のヘリならただ。という人がよくいますが、県警ヘリの使用には莫大な税金がかかっています。

f:id:isakamichihiko:20160906122813j:plain

 

我々のような民間人が救助に出動した場合は少なからず費用が請求されます。ごく希にですが、費用発生を伝えると、救助はいらないといわれる場合もあります。
ちょっとしたことで救助要請をするのはいけませんが、いざというときに躊躇なく救助を呼べるように山岳保険には必ず加入しておきましょう。